金融環境の変化をとらえ、金融機関と対等な関係に向けた企業づくりを

2016年7~9月期同友会景況調査(DOR)オプション項目の結果より

経営者保証ガイドラインへの認識と活用状況について

調査要項

調査時点:2016年9月1~15日
調査対象:2,325社 回答企業:1,010社(回答率43.4%)(建設184社、製造業334社、流通・商業289社、サービス業195社)
平均従業員数:(1)37.0人(役員含む・正規従業員)(2)27.0人(臨時・パート・アルバイト)

〈経営者保証ガイドライン〉
全国銀行協会と日本商工会議所などが策定した「経営者保証に関するガイドライン」は、(1)会社と経営者の資産分離、(2)財務基盤の強化、(3)経営の透明性が確保された場合、保証に依存しない融資を検討するとの指針を示したもので2014年2月から適用を開始しました。

約8割が「ガイドライン」を認識

 経営者による個人保証(以下「経営者保証」)は、積極的な事業展開や円滑な事業承継の障害となっているとして「経営者保証ガイドライン」が2014年2月に策定され、経営者保証を提供せずに融資を受ける流れが広がりつつあります。

 中同協は「経営者保証ガイドライン」への認識を広げ、経営者保証を外せる企業づくりを方針提起しています。

 2016年7~9月期同友会景況調査(DOR)オプション項目で「経営者保証ガイドライン」をめぐる認識と活用状況を聞きました。

 まずガイドラインへの認識では「名称、内容ともに知らない」は約2割で、2年前(2014年7~9月期のDOR調査)約4割が知らなかったのと比べて減っています(図1)。

 一方、「名称、内容ともに知っている」(38・5%)と「名称のみ知っている」(40・1%)をあわせて約8割が存在を認識しており、策定されてから約2年半が経ち、経営者の中でガイドラインに対する認識が広がりつつあります。

経営者保証に依存した金融機関の実態を反映

 次に経営者保証の有無について聞いたところ、「全ての借入」、「一部の借入」をあわせて78%が経営者保証をしています(図2)。

 中小企業庁資料(「個人保証制度見直しの背景」2014年2月)の約9割という数値より少なく、DORでは「借入をしていない」や「すべての借入に経営者保証をしていない」が合わせて2割存在することが特徴です。とはいえ、約8割が経営者保証をしているということで、圧倒的に多くの金融機関が経営者保証に依存した融資を行っている実態が現れています。

 経営者保証を提供している方に、2014年2月以降ガイドラインを活用して保証解除の相談をしたかどうか尋ねたところ、「既存融資で保証が外れた」、「新規融資で外れた」、「相談したが断られた」、「現在、相談している」という、実際に解除に向けたアクションを起こした企業は約3割、「今後、相談する予定」が約3割という結果で、合わせて6割が経営者保証の解除への意思を明確にしています(図3)。

 とりわけ「名称、内容ともに知っている」と答えた中では76%がアクションを起こしており、内容について理解が広がれば、解除を目指す動きはさらに広がると見られます。

保証外せた17%

 「既存融資で保証が外れた」、「新規融資で外れた」のは合計で17%(143社)あり、これは2年前と比べて広がっています(2014年2月の東京同友会調査では保証を外せたのは4%、中同協九州・沖縄ブロックの合同調査でも1・3%)。ただし保証が外れた143社で261件の解除となっており、保証が解除できる企業では一気に解除が進むもののそれ以外の企業が取り残される可能性があり、今後こうした企業で解除が進むかどうかが焦点となります。

 それでは、どの金融機関で保証が外れたのかを聞いたところ、「地方銀行」が6割超と群を抜いており、「政府系金融機関」や「信金・信組」の倍以上の水準です(図4)。

 金融庁の『「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集(2015年12月改訂版)』では全46件の事例のうち「主要行」が1件、「信金・信組」が7件などに対して「地域銀行」が35件となっており、地方銀行での取り組みが目立ちます。金融機関側から「経営者保証ガイドラインに基づく保証に依存しない融資の検討を打診」など、積極的な取り組みが報告されており、こうした背景を受けて地方銀行で保証解除が先行していると考えられます。一方、「信用保証協会」が2・2%と大きく立ち遅れており、どのように伸ばすのかが課題です。

金融機関と対等な関係に向けた企業づくりを

 経営者保証の解除を「相談するつもりはない」と答えた方にその理由を尋ねたところ「保証債務を履行する事態を想定していない」が31・7%が最多でした(図5)。一方、「解除できる財務・業績ではない」や「個人保証した方が借入しやすい」、「金融機関との関係を悪化させたくない」との回答もあり、金融機関と対等な関係を構築するための企業づくり、とりわけ経営指針に基づく財務基盤の強化、経営情報の透明性の確保の課題が重要になっていると言えます。

 現在、金融庁は、各金融機関が経営者保証や担保に安易に依存せず、融資先企業の事業性評価に基づいた融資行動を自己点検するための「金融仲介機能のベンチマーク(55項目の指標)」を公表し、中小企業と地域に貢献する金融ビジネスへの転換を謳(うた)っています。それだけに、私たち経営者は、いっそう事業の存在意義と発展方向を明確にして発信し、経営者保証について金融機関と対話していくことが重要になっています。

中同協事務局 中平 智之

「中小企業家しんぶん」 2016年 12月 5日号より