『人間らしく生きる』を改めて考えるー中同協 インド・スリランカ視察

 「世界一の成長率となったインドの多様性を見る~『人間らしく生きる』を改めて考える」をテーマに、中同協はインド・スリランカ視察を12月10~16日に行い、6同友会から15名が参加、政府系組織や4つの経営者団体、現地企業や日系企業6社を訪問・懇談しました。

急成長するインド

 義務教育もなくカースト(身分制)が残り、23言語あるインド。1年で35万人増える人口2000万のデリーでは、IT企業を集めた近代的なビルが立ち並ぶサイバーシティ。それとは対照的に、サイクルリキシャーで回ったオールドデリーでは、闇市や児童労働、路上生活をする人々や物乞いをする子どもたちの姿に、戦後日本の姿を重ねる人もいました。

 人や車の多さと騒音、深刻な空気汚染やゴミ問題の解決には、多様な言語と民族・宗教問題が制度や教育の壁ともなっていることを感じます。市内には、バサント・スクエア・モールなど巨大な商業集積がいくつも形成されています。

インドを代表する3つの経済団体

 インドでは3大経営者団体であるインド産業連盟(CII)、インド商工会議所連合会(FICCI)、全インド商工会議所連盟(ASSOCHAM)と懇談しました。

 中同協として会の紹介や「中小企業における労使関係の見解」「中小企業憲章」の英訳を持ち込み、日本の中小企業の実態や同友会の取り組みを紹介。インド側からは商取引や投資、連携に対する日本への期待の大きさを感じ、中小企業憲章については「インドでも取り組みたい」との意見も上がりました。

 マイクロ・中小企業省の産業育成機構では、地場産業育成のため、技能訓練や経営の学習などができる起業家育成の仕組みがつくられていました。

企業では「人育て」が課題

 インドでは小出インディアやビージーなど日系企業2社と地元メーカーを訪問し、日本の海外産業人材育成協会(HIDA)がインドの起業家育成に貢献していることを知る機会ともなりました。日系企業は、インド市場をターゲットに得意先の要請によって進出し、自動車部品は国内で調達できる状況。社員が定着するよう、育成に力を入れていました。

 スリランカの企業は日本で経営を学び、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を推進しているケーブル会社や壁面材会社、縫製会社などを視察。美しく景観も整備され、高等教育まで無償で識字率が92%と高いこともあって、5Sの徹底ぶりに目を見張りました。

 企画段階からインド大使館や日本で学んで起業した人たちでつくるスリランカの「JASTECA」から紹介を得るとともに、事前学習会ではジェトロや国際労働財団の協力もあり、新たな連携ができました。帰国後にはインドのCIIから日本での懇談・企業訪問依頼や、インド大使館からサービス業展示会紹介依頼があるなど、交流が広がっています。

スリランカでケーブル会社視察の様子が翌日の地元紙「DailyNews」で報道されました

「中小企業家しんぶん」 2017年 1月 25日号より