円安などで一時的な好転あるも、2017年前半の景気は下方屈折の恐れ増す

【同友会景況調査(DOR)概要(2016年10~12月期)】

〈調査要項〉

調査時点 2016年12月1~7日
調査対象 2,303 社
回答企業 960社(回答率41.7%)(建設170社、製造業307社、流通・商業290社、サービス業182社)
平均従業員数 (1)38.5人(役員含む・正規従業員)(2)27.7人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

主要指標は軒並み改善

 日銀の12月短観(全国企業短期経済観測調査)によると、業況判断指数(「良い」-「悪い」割合)は大企業製造業が6→10と1年半ぶりに改善、全規模全産業でも5→7と改善しました。

 DOR10~12月期の業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)でも△5→1と好転、業況水準(「良い」-「悪い」割合)も△4→5と大きく改善しました。売上高(「増加」-「減少」割合)も△6→4、経常利益(「増加」-「減少」割合)は△3→2と主要指標は軒並み改善しました。(図1)

 業種別の業況判断DIでは、建設業は△11→△1、製造業が△12→0、流通・商業が△3→△3、サービス業が11→14と、建設業と製造業の好転が目立ちます。また、地域経済圏別では、関東が△1→4、中国・四国の△1→10、九州・沖縄で△5→13と水面上に出ました(図2)。企業規模別では、100人以上、50人以上100人未満がほぼ横ばい、20人以上50人未満、20人未満が5ポイント以上の改善となり、企業規模間の差が縮まりました。

次期は下降屈折の恐れ

 「トランプ相場」や円安で企業心理は改善しているようですが、一過性の高揚感との受け止めも強く、先行きの景況感については慎重な姿勢を崩していません。今期の好調ぶりから一転、次期は総じて悪化を見込んでいます。業況判断DIは1→△1、次々期は△2、業況水準DIでも5→△1と今期の好調を維持することが厳しい状況です。

仕入価格の上昇圧力高まる

 前期から大きく余裕感が強まった資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は今期も継続しています。借入金利にわずかな上昇圧力があるものの借入難度への影響は限定的と見られます。

 仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は前期の見通しが外れ、今期は6→13と大きく上昇しました。2期連続で「下降」側にあった売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は△3→1と上昇したものの十分な価格転嫁ができるかどうか、採算悪化への懸念材料となっています。

生産性は上昇するも、人材不足は深刻化

 1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)および1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)はそれぞれ△6→4、△4→2と改善しました(図3)。サービス業は過去1年半を通じて「増加」側を維持、製造業は今期△12→6とプラスに転じ、大幅に改善しました。

 雇用面では、正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)は7→11、臨時・パート・アルバイト数DI(「増加」-「減少」割合)は3→7と「増加」側で推移し、安定した動きを示しています。

 人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は△38→△43と1992年1~3月期以来の△40超えとなり、人材確保難の深刻度は増しています(図4)。

設備投資は安定推移

 10~12月期の設備投資の実施割合は33.3%でした。2013年7~9月期から30%以上の実施割合を推移していますが、企業規模間においては差があります。設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)も2011年以降不足感が表れているものの、先行き不透明感から「様子見」の企業も少なくありません(図4)。

人材確保難への危機感高まる

 経営上の問題点では「従業員の不足」の指摘割合が上昇しており、今期は「民間需要の停滞」「同業者相互の価格競争の激化」とほぼ同率でトップの指摘割合となりました(図5)。経営上の力点でも「人材確保」が38%→43%と危機感を高めていることが示されています。民間需要がに力強さでないなかで、「新規受注の確保」「付加価値の増大」へ注力すると同時に、人間尊重の経営を前提とした「社員教育」と「人材確保」を並行して対応していくことが、ますます求められています。

<人材不足に関する声~DOR記述回答より>

■新卒採用難
・新卒採用が難しいので1名中途採用をした。来年からの戦力強化に向けて、現場教育している。(宮崎、理美容用品の卸売業)

■技術者・管理者の確保難
・人材(技術)不足による既存社員への負担が大きくなっている。来春新たに3名の加入が決定しているが、社員教育を通して経営の安定をはかりたい。(青森、総合建設業)
・職人不足は深刻。大工さんの高齢化で工事が遅れ気味でも工期と品質は厳守。そのためアフターサービスに時間がかかりコスト上昇。最後の業種業者へしわよせがくる。大企業は追加工事やコスト高には目をつぶる。魅力のないように見える仕事をなんとか夢の持てる企業へ変えたい。(福岡、建設業)

■社員の高齢化と世代交代の課題
・加工所の高齢化により後継者がいないため、廃業が急増している。設備も老朽化しているが、買い換えられない企業が多くあります。(大阪、包装用品加工業)

■地域の人口減少と若者の域外移転
・私たちの地域も人口減少を肌で感じる時代に入ります。売上を少しずつでも伸ばしていくために、営業力の強化と社員一人ひとりの能力の向上(社員教育)、そして優秀な人材の確保(新卒の採用)が欠かせません。(広島、空調・冷凍設備の設計・施工)

「中小企業家しんぶん」 2017年 2月 5日号より