リーダー育成を視野に入れた女性活躍の推進を【同友会景況調査(DOR)オプション調査の結果から】

会員企業における女性活躍推進の取り組み

中央大学経済学部教授・中同協企業環境研究センター 鬼丸 朋子

 今回の「女性活躍推進の取り組み」に関する調査は、同友会景況調査(DOR、2016年10月~12月期)のオプション調査として実施されたものです(960社が回答)。企業規模別での内訳は、5人未満が63社(6・6%)、5人以上10人未満が129社(13・4%)、10人以上20人未満が216社(22・5%)、20人以上50人未満が273社(28・4%)、50人以上100人未満が143社(14・9%)、100人以上が64社(6・7%)でした。(本文では割合を小数点第1位を4捨5入した整数で表記しています)

1 会員企業における女性社員数の状況

 資料1で会員企業における2016年12月1日現在の女性社員数をみると、「いない」と回答した企業は4%に過ぎず、多くの企業で少なくとも1人以上の女性を雇用していることがわかります。

 また、5年前と比較すると、女性社員数が「増えた」と回答した企業は960社中358社(41%)、「変わらない」と回答した企業は417社(48%)、「減った」と回答した企業は104社(12%)でした。これを企業規模別にみると、5人未満でも13%が、5人以上10人未満および10人以上20人未満規模でも31%の企業が、20人以上50人未満および50人以上100人未満規模でそれぞれ50%、49%の企業が、女性社員数を増やしていることがわかります(資料2)。さらに、100人以上規模では、「増えた」とする企業が64%にのぼっています。このように、会員企業では、この5年の間に多くの女性を共に働く仲間として迎え入れているのです。

2 会員企業における意思決定の場への女性の参画状況

 では、意思決定の場への女性の参画、すなわち管理職や役員といった指導的地位に女性が占める割合は、どのように変化しているのでしょうか。まず、女性管理職数についてみると、「いない」と回答した企業が372社と全体の52%にのぼることがわかります(資料3)。

 また、企業規模別にみると、正規従業員数が20人を超える企業であっても、2人以上の女性管理職を擁する企業は少数にとどまっているのが現状です(資料4)。

 同様の傾向は、女性役員数にもみられます。女性役員が「いない」とする回答は357社と全体の46%で、複数の女性役員を擁する企業はごく少数です。

3 会員企業における女性社員の活躍・定着の取り組み

 とはいえ、状況改善に向けて動き始めている企業も少なくありません。すでに「女性社員の活躍・定着」に「取り組んでいる」企業は451社(49%)、「今後(1年以内)に取り組む予定」の企業は100社(11%)にのぼります。一方で、「予定はない」(77社、8%)、「特に意識していない」(266社、29%)「該当者がいない」(33社、4%)と回答した企業も一定割合存在しています(資料5)。

 資料6は、「女性社員の活躍・定着」に「取り組んでいる」企業および「今後(1年以内)に取り組む予定」の企業(計551社)が、具体的にどのような取り組みを進めているかをみたものです。同図表から、出産・育児・介護などに配慮するだけでなく、社内の意識啓発や性別にとらわれない採用・配置・教育訓練・評価・昇進を通じて、男女両性に仕事を通じて活躍できるように努めていることが読み取れます。さらに、業務の効率化や長時間労働の是正を進める会員企業が存在していることもわかります。

4 リーダー育成を視野に入れた女性活躍の推進を

 今回の調査を通じて、会員企業が女性社員を積極的に雇用するようになってきていることがわかりました。一方で、管理職や役員などの女性リーダーを輩出するという面では、取り組みの余地があることも浮かび上がってきました。少子化の影響で人材不足が深刻化していく中で、リーダーの育成も視野に入れた女性社員の活躍・定着策を推進していくことは、会員企業の人材戦略の1つの柱になっていくと考えられます。

 また、女性社員の活躍という目標と正面から切り結び、改善を積み重ねることは、同友会会員企業が掲げる「人間尊重の経営」にもつながってきます。「人(=男女両性)を生かす経営」実現のために、今こそ会員である中小企業経営者の本気の取り組みが求められているといえるでしょう。

「中小企業家しんぶん」 2017年 2月 25日号より