トランプ大統領と移民

 3月7日にトランプ大統領は「入国制限7カ国からイランを除外し6カ国。対象国でもグリーンカードや2重国籍者の入国を認めること。シリア難民受け入れ無期限から120日間停止」の新大統領令に署名しました。この移民制限の問題は注意事項です。アメリカが2008年に人口ボーナスが終了しているにもかかわらず成長しているのは移民がいるからであり、アメリカの成長にとって移民は非常に重要です。(表)を見ると人口増加は移民のおかげだということが分かります。毎月12万人ほどの移民を受け入れることで、アメリカの潜在成長率(投入労働力+投入資本+技術革新の生産性)は2016年から1.7%台で続くと見られ、これにより実質GDP成長率2%台を保っていますが、このうちの労働力人口の増加約20万人のうち移民が無くなれば1%程度成長がなくなるということになります。すべての移民を制限すれば日本と同じ0%台後半の潜在成長になりますので、中小企業への影響は大きいです。

 また、トランプ大統領の環境政策とZEV(排ガスゼロ車)規制(電気自動車など排ガスが出ない車の販売を促す規制)との関係です。2月27日に大統領は軍事費を2017年度の1割の540億ドル(6兆円)増やし、温暖化対策費などを削ると発表しています。ですが、今年からこの規制によりカリフォルニアなど全米10州で2025年15%目標にして、販売台数の一定割合をZEVにすることを義務づけ、未達成なら罰金か競合他社からクレジットを購入する義務が発生します。このためテスラ自動車は2016年販売台数8万台なのに、パナソニックと組んで2018年50万台分の電池工場を作っています。中国も2018年から規制を行い2020年40%目標です。この流れに原油価格が連動し、間接的に中小企業への影響がでるので注意深く見てください。

(表)アメリカのGDP成長率と移民人口割合

「中小企業家しんぶん」 2017年 3月 25日号より