【東日本大震災復興視察ツアー報告要旨】(2) 町と中小企業の協働で地域ブランドを

「南三陸杉」で交流人口増へ

 中同協は3月16~17日に東日本大震災復興視察ツアーを開催しました。今号では2日目に行われた小野寺邦夫・丸平木材(株)代表取締役の報告概要を掲載します。

杉の良材に恵まれて

 南三陸は伊達藩御用達の杉の良材の産地で、当社の工場は震災前には創業時の海運に適した川沿いにありました。

 2008年に同友会でつくった経営指針には、南三陸杉のブランド化を柱にしました。挽(ひ)く木のほとんどを南三陸産に限定し、施主向けに「森林見学会」などを開催。山主や市民団体、工務店と本来の山のありかた、杉の商品作りを考え、これらが評価されて2011年3月1日に全国林業技術者コンクールで優勝。2008年にブランド化に向かって地域で命名した「南三陸杉」が広く知られることになりました。

 しかしその10日後、東日本大震災で工場や自宅は、あっという間に津波に飲まれてしまいました。

「地木の力を輝かせる」理念をもとに再生

 「何のために、何に向かってやるのか?」を自問自答するなかでたどり着いた答えは、「経営理念」でした。3月20日、社員20人全員が1人も欠けることなく集まってくれ、社員に自社の再生を宣言。同友会仲間の協力もあり通常の工期の3分の1で、2012年4月11日に復活。「地木の力を輝かせる」という理念を根幹に、製品になっても生きている杉の力を提供する仕事を当社の柱にしました。

 ひとつは地域復興のために建築・土木資材の供給責任を果たすこと。木材住宅推進協議会を立ち上げて、木造災害公営住宅の92戸のうち80戸の建築材を当社が提供。2つ目は南三陸杉の市場確立を進めることです。

 雨が少なくても、海からの霧がそれを補い、山に降り注いだ雨水が地下を通って海にミネラルを与える。この豊かな循環を育む南三陸の山は、生物多様性を考慮したものとして2015年に国際森林認証(FSC)を取得。その供給責任を果たすため当社では流通認証(COC)を取得しました。

 町役場は日本の公共物件では初めてとなるFSCの全体認証をとって建て替えられることになり、企業のCSRとしても南三陸杉が使われるようになりました。

 海は南三陸戸倉の牡蠣が国際的な海洋養殖認証(ASC)を取得。海も山も国際認証を取得した自治体は世界で初めてです。

山さ、ございん

 山に携わる人々が集まって「山さ、ございん」(山においでよ)というプロジェクトをつくり、その後「海さ、ございん」、これからは里の復興とともに「里さ、ございん」もつくり、最終的には「南三陸さ、ございん」へ。メンバーは自分の生業(役割)を通してかかわります。

 震災前から人口が3割減り、全事業所調査の中で「これからが正念場」という企業が大多数でした。町の中小企業振興基本条例もつくり、地域と中小企業が「協働」して価値を創造し、イノベーションの嵐を作っていこうとしています。

 若者が働きがいややりがいをもって働ける場をつくるのが私たちの役割です。

会社概要

創業:1908年
設立:1966年
資本金:1,000万円
社員数:21名
事業内容:木材製材・加工・販売、建築資材販売
URL:http://maruhei-wood.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2017年 5月 5日号より