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「人を生かす経営」の真価を発揮するとき~『2017年版中小企業白書』を読んで

 今年は「中小企業白書」(以下、白書)とともに「小規模企業白書」も同時に出され、両者合わせて1200ページ超と大変分厚いものです。

 今年のテーマは「中小企業のライフサイクル」。企業の開業、成長、廃業といったライフサイクルに注目し分析しました。

 まず、第一部の動向から倒産件数はどうなっているか。2008年をピークに減少傾向にあり、3年連続で1万件を下回っています。ところが、休廃業・解散件数は増加傾向にあり、2016年は過去最高(約3万件)となりました。2000年と比較すると2倍近い件数となっており、企業が減少している状況はかわっていません。

 厚生労働省「雇用保険事業年報」により開業率・廃業率を算出すると、2001年から2015年にかけて、開業率は5%弱、廃業率は4%前後と欧米諸国に比べて非常に低い水準で推移しているとしていますが、開業率の方が高いので若干でも増えているのでは、と思ってしまいます。しかし、企業数などを把握している公式統計が「経済センサス」に移行してからも、一貫して日本の中小企業は減っているので、釈然としません。

 「経済センサス」では、調査間隔がおよそ2~3年であるため、調査と調査の間に開業し、廃業した企業については捕捉できないとのこと。それに対し、「雇用保険事業年報」は毎年集計されていますが、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしています。ところが、事業者1人での開廃業の実態は把握できないという難点があります。いずれにせよ、公式統計による細かい把握は難しいのですが、終始減っていることは間違いありません。

 第2部「中小企業のライフサイクル」は、起業・創業、事業の承継、新事業開拓の促進、人材不足の克服の4章から成っており、白書の大宗を占めています。

 例えば、「人材不足の克服」の章では、高い専門性や技能等を有し、事業活動の中枢を担う「中核人材」と、そうした中核人材の指揮を受けて、事業の運営に不可欠たる労働力を提供する「労働人材」の2つに区分して分析しています。

 中核人材は各部門の中心的役割や組織の管理を担う人材であり、複数の労働人材を指揮する立場にありますが、企業においてはそれらを担う人材の数が少なく、そうした人材が不足することは、新事業展開や成長の機会を失うとともに、日々の企業経営にも直接的な影響が生じることから、その不足感はすぐに切実なものとして認識されます。

 対して、労働人材は、中核人材に比べて相対的に代替性があり、短期的には長時間労働などで対応可能でありますが、人材不足の度合いが増してくると、労働環境の悪化が深刻化し、さらに人材の確保が困難になり、事業活動の継続の観点からも経営に影響が生じるといった認識のされ方になると考えられます。

 中核人材と労働人材、いずれの場合も影響は大きいわけですが、同友会が追求してきた「人を生かす経営」の真価を発揮するときとも言えます。

 今回の中小企業白書で取り上げられた事例では26社中・3社、小規模企業白書では21社中・1社の会員企業が紹介されています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2017年 5月 5日号より

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