【中同協インド・スリランカ視察】第5回 世界から考える「人を生かす経営」

各国の働く労働者、経営者の生きざま

 中同協では昨年12月10~16日にインド・スリランカ視察を行いました(本紙3月5日号に特集)。視察に参加した林哲也氏(香川同友会副代表理事)のレポートを紹介します。

インドは深刻な「環境汚染」と「貧困」

 インド・ニューデリーの感想は「よく言えば『たくましい』。率直に言えば『生活するには厳しい環境』」です。また、空気は、どんよりと白っぽく、環境汚染は極めて深刻でした。

 驚いたのは、日中に歩道の地面や車が行き交うロータリーなどの空き地で平然と寝ている風景です。また信号待ちの車に向かって、新聞を持って売りに来る「児童労働」の風景です。「10歳で学校には行っていない。金を稼ぐ方が良い」と話す子どももいました。

 もうひとつは格差です。貧困状況の一方でブランドショップが軒を並べ、IT系企業の集積したビルがありました。

 「人を生かす経営」のためには、まず、生活できる賃金水準の実現は第一義的だと思いますが、これからの道のりは極めて難しいものだろうと思いました。

想像以上の水準のスリランカ

 次の視察国のスリランカで、国としての社会保障の様子を尋ねたところ、医療費は、公立病院であれば無料であり、高度医療を受ける場合は民間医療機関となるとのこと。しかし、その場合も医療費が高い場合は「政府に手紙を書いてお願いすると助けられる」とのこと。

 子どもの学費は、大学まで無料。小学校から英語教育の時間がありますが、大学進学は、選抜が厳しいそうです。

「5S」と「改善」

 MIDAYA(陶器工場)の見学は印象的でした。経営者のダヤシリさんは日本の瀬戸物生産の修得のために日本に留学された方で、日本語も堪能でした。

 MIDAYAは「中国の『大量生産で安価な瀬戸物づくり』にはマネができない、手の込んだ技量の必要な仕事に特化しているのが強み」とのこと。工程を見学するとイギリスなどで売られるデザイン性の高い製品に社員が熱心に取り組んでいました。

 ダリシリさんによると「当社の強みの源泉は、福利厚生や給与水準、地域での役割に誇りを持って社員が働いていること」と語る一方で、「しかし、確かに5Sなどの取り組みで生産現場は良くなりますが、国際的な経営の変化に即応していく事業戦略は非常に重要で、その観点を抜きには中小企業は生き残ることができない」と言われていました。

 視察を経て痛感したことは、中小企業経営者は「英語」で会話できなければ仕事はできないこと、そして、日本的な「5S」と「改善」を上手に取り込んでいることでした。JICA(国際協力機構)や日本財団が、日本のものづくり技術と伝統を伝えてきた歴史と実績が大きな貢献をされていました。

「中小企業家しんぶん」 2017年 7月 5日号より