データでだまされないために

 データを読む場合に注意しなければならないことがあります。それはデータは元デ-タで確認しないと嘘がつけるものでもあること。同じデータなのに正反対の見出しがつく場合があることなど注意して見なければなりません。

 例えば県民所得について、「4年連続増加」という見出しで、「1人当たりの所得は増えています」と報道されたとします。ですが、総額で見てみると2014年には減少しています(表1)。これは人口減少で1人当たり所得が増えた結果です。ですからデータは主語(1人当たりなのか、総額なのか)で正反対の結論がいえます。つまり統計で嘘をつくことができるのです。

 また限定したデータでも正反対のことが言えます。

 例えば障害者雇用について「大企業のほうが障害者の雇用率が高く中小企業のほうが低い」とよく報道されます。〈表2〉のデータを見ると1000人以上企業が雇用率2.1%、50~99人企業が1.5%で確かに低い値です。しかし、これは雇用義務のある従業員50人以上の法定雇用率という限定されたデータです。しかし全部の障害者雇用数で見ると中小企業のほうが圧倒的に雇用しています。実数で見れば従業員99人以下で身体障害者の64.6%、知的障害者の71.5%も雇用しています(表3)。毎年公表されている(沖縄同友会の要望で毎年公表が実現している)沖縄県のデータで見ても55人以下が50%雇用し、300人以下で72.7%雇用と明らかです。

 さらに、子どもの貧困率のように、2つのデータがあり、都合のいいほうのデータを持ってきたりすることもあります。総務省の「消費実態調査」によるものでは、5年に1度調査で99年9.2%から2009年9.9%に悪化したが、2014年には7.9%に下がった(表4(1))と安倍総理が発言しネットで話題になりました。ですが、もうひとつの長期統計の厚生労働省の3年に1度の「国民生活基礎調査」からの相対的貧困率の推移では、2012年16.1%から2015年には13.9%に低下しましたが、そもそもの数値が6%以上も高い統計があり、しかも国際的にはこちらの統計が採用されています(表4(2))。働く母親の増加による改善では〈表5〉で見ても明らかなように、2012年から2015年までに正規は36万人減も非正規が167万人増とパートが増加していますので少し改善といえますが、大人も含めた相対的貧困率は15.6%と0.5%の改善にとどまっています。OECD子どもの貧困率で日本は下から10番目とOECD平均を上回っています。

 このように統計データは使う側の都合で正反対の結果を導き出すことができますので、自ら元データをよく確認することが必要です。

 2010年1月から8年近くこの『経済データを読む』の執筆を松井が担当しました。長きにわたりご愛読いただきまして、どうもありがとうございました。

中同協前専務幹事 松井 清充

「中小企業家しんぶん」 2017年 7月 25日号より