【同友会景況調査(DOR)概要(2017年4~6月期)】中小景気、回復感あれど、定着には至らず

〈調査要項〉

調査時点 2017年6月1~15日
調査対象 2,402社 回答企業 963社(回答率40.1%)(建設178社、製造業301社、流通・商業286社、サービス業186社)
平均従業員数 (1)38.1人(役員含む・正規従業員)(2)23.4人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

主要指標改善で回復感

 DORは今期、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は3→5、売上高DIは5→7、経常利益DI(いずれも「増加」-「減少」割合)も1→5と好転、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も0→1と回復感のある動きとなりました。次期(2017年7~9月期)も引き続き改善を見込んでいます。(図1)

 しかし、採算水準DI(「黒字」-「赤字」割合)、1人当たり売上高DI、1人当たり付加価値DI(いずれも「増加」-「減少」)は2期連続で下落、停滞と、先行きは楽観できません。

 今期の業況判断DIを業種別でみても、建設業は6→△5で11ポイント悪化、製造業が0→4、流通・商業が△6→5で好転、サービス業が19→15と業種により好転と悪化の差が大きく出ています。地域経済圏別では、前期大きく悪化した近畿が△10→2と大幅回復、北陸・中部も0→3と好転しました。ほかの地域では関東のみ悪化、北海道・東北、中国・四国、九州・沖縄では、横ばいとなっています。企業規模別ではすべての規模でプラス水準となり好調です。(図2)

 日銀の6月短観(全国企業短期経済観測調査)は、大企業製造業は3期連続で改善、半導体市場の拡大が景況感改善のけん引役となっており、中小企業製造業も、堅調に推移しています。企業業績の好況感ほどには個人消費の伸びは鈍く、引き続き景気動向への注意を払う必要があります。

仕入単価はじわりと上昇、資金繰りは余裕感高まる

 仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は2016年7~9月期以降、じわりと上昇を続けており、その傾向は製造業に顕著に表れています。売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)も同様に上昇しており、価格動向に大きな変化は見られません。その一方で、1人当たり売上高DIおよび1人当たり付加価値DIは減少傾向にあり、採算好転への壁となっています。(図3)

 資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は11→16で5ポイント余裕感が高まりました(図4)。なかでも従業員20人未満の規模では1990年のDOR調査開始以来初めて「余裕」が上回るなど、全体的に資金繰りの余裕感が高まる結果となりました。ただし、借入金利については、「低下した」と回答する割合が減少傾向にあり、金利動向へのアンテナを高めておいた方がよさそうです。

人材、設備の不足感は変わらず

 人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は2011年7~9月に「不足」側に転じて以降、高い不足感が続いており、経営課題の1つとして認識も強まっています。

 人手の不足感と同様、設備投資についても不足感が継続しています。設備投資実施割合は2013年7~9月期以来30%を超えていますが、実施目的は「維持補修」への指摘割合が多く、先行き不透明感からくる様子見の傾向も続いています。

経営課題の分散化への対応は、地道な企業づくり

 経営上の問題点は、今期「同業者相互の価格競争の激化」(34%)、「民間需要の停滞」(33%)、「従業員の不足」(33%)がほぼ同率の指摘割合となり、「人件費の増加」も27%と上位3項目に迫る勢いです(図5)。とりわけサービス業は「人」に関する課題が大きく、「従業員の不足」(48%)、「人件費の増加」(41%)と全体の割合と比較すると大きく上回っています(図6)。

 経営上の力点は「新規受注(顧客)の確保」(56%)、「付加価値の増大」(50%)、「社員教育」(45%)、「人材確保」(40%)の順でした。「人材確保」については、4年前の同時期(2013年4~6月期)の20%と比べると、指摘割合が2倍になっており、人材確保の課題はますます大きくなってきています。

 業種・地域によってそれぞれ傾向は異なりますが、経営課題の分散化、多様化への最良の対策は地道な企業づくりの積み重ねにほかなりません。実践する企業の輪をひろげ、地域経済の担い手としての役割を十分に果たしていきましょう。

<会員企業の声から>

○2016年より仕入を減らして自社で一貫生産する経営方針に切り替え、よい成果が出ている。今後も安い輸入品よりも原価を安くしていくことは難しいことだが、利益だけではなく、雇用促進に力を入れたいので、スタンスは変えずにやっていく(北海道、製造業)

○働き方改革にともない、残業時間削減と休日の確保を全社的に実践、管理者に意義と目的を伝え、社員への周知徹底をお願いしたところ、4、5月はかなり改善できた(愛知、建設業)

○今まで図面化することや特急品対応の製作に対して費用を安く抑えていたが、そこが自社の強みであるから、それなりの費用を請求するようにした。もう少し強気の経営をしていきたい(福岡、製造業)

○計画的受注につながるよう、期末の経営指針発表会で方向性を示したことが結果となった(京都、サービス業)

「中小企業家しんぶん」 2017年 8月 5日号より