だれもが人間らしく働ける企業づくり、生活できる地域づくりを

【同友会景況調査(DOR120号)2017年4~6月期オプション調査】障害者雇用について

〈調査概要〉

調査時点 2017年6月1~15日
調査対象 2,402社 回答企業 963社(回答率 40.1%)(建設178社、製造業301社、流通・商業286社、サービス業186社)
平均従業員数 (1)38.1人(役員を含む正規従業員数) (2)23.4人(臨時・パート・アルバイト)

 中同協・企業環境研究センターでは、2017年4~6月期の同友会景況調査(DOR対象企業2402社のうち963社回答、平均正規従業員数38・1人)のオプション項目として障害者雇用について調査しました。2004年1~3月期に実施した同内容の調査結果との比較も交えて結果を報告します。

(中同協事務局 本多由香)

障害者雇用を経験したことのある企業は43・9%

 障害者雇用の経験は、2004年調査時は「現在雇用中」「過去に雇用したことがある」と回答した企業が36・1%だったのに対して、今期(2017年4~6月期)は43・9%と7・8%増えました(図1)。

 障害者雇用促進法により障害者雇用が義務付けられているのは従業員が50人以上の企業となっています。そこで、企業規模別で集計してみると、50人以上100人未満では72・6%、100人以上では92・1%もの企業が障害者雇用に取り組んでいることがわかりました。ちなみに、20人以上50人未満では45・2%、20人未満では26・2%でした(図2)。

障害者雇用経験企業の約6割が身体障害者を雇用

 障害者雇用経験があると回答した企業に「どのような方を雇用していますか」とたずねたところ、約6割の企業で身体障害者を雇用していることがわかりました。具体的には、身体障害者が59・8%、知的障害者が40・7%、精神障害者が14・2%、発達障害者が12・3%、重複障害者が1・0%となっています。

 なお、障害者雇用制度は2018年4月1日から段階的に対象が広がる予定となっていることから、障害者雇用への関心を高め、対応していくことが求められます。

障害者雇用は「企業としての社会的責任のため」と回答した企業が34・9%

 また、雇用の経緯では「企業としての社会的責任のため」が34・9%とトップ、続いて「障害の有無に関係なく通常の募集で」が28・5%、「関係機関からの働きかけ」23・1%と続きます。「法定雇用率達成のため」は16・0%、「雇用中の社員が障害者になったため」は15・0%でした(図3)。

 一方で、障害者雇用をしていない企業にその理由をたずねたところ(複数回答)、「障害者に適した仕事がない」が50・4%と半数を占め、続いて「受け入れる施設がない」が26・2%、「障害者に適した仕事がわからない」が24・2%、「雇用するだけの仕事量がない」が20・5%でした。

 障害者雇用に際して、仕事の確保、施設や環境の整備、社内の体制づくりなどがハードルとなり雇用をしていない企業もあることがわかりました。

障害者雇用の見込み「ある」と回答した企業は27・1%

 今後の障害者雇用の見込みをたずねたところ、「ある」と回答した企業は2004年調査時は9・9%だったのに対し、2017年調査では27・1%と17・2ポイント上昇しました。

 逆に「ない」と回答した企業は49・1%から27・7%に減少しました。「わからない」と回答する割合は約3割と変わりませんが、「職場実習受け入れは検討したい」への回答割合も増加するなど、10数年の経過とともに、会員企業の障害者雇用に対する意識に大きな変化が見られます(図4)。

 地域の雇用の担い手でもある中小企業は、共生社会に向け、障害者や就労困難者を取り巻く問題に取り組み、すべての企業でだれもが人間らしく働ける企業づくり、生活できる地域づくりを実現させる要として期待が高まっています。

 そのためにも、だれもがともに育ちあい、その能力を発揮できる職場環境をめざす「人を生かす経営」の総合実践に取り組んでいくことが重要になっています。

※障害者雇用率制度

 従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります(障害者雇用促進法43条第1項)。民間企業の法定雇用率は2・0%です。従業員を50人以上雇用している企業は、身体障害者又は知的障害者を1人以上雇用しなければなりません。

(2017年9月現在)

「中小企業家しんぶん」 2017年 9月 5日号より