小・中学校の主幹教諭向け企業研修会を実施~学校教諭が企業経営者からマネジメントを学ぶ【岡山】

【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】74

岡山同友会

 岡山同友会は7月から8月にかけて、県内の小・中学校の主幹教諭(民間企業の幹部社員に相当。将来の教頭・校長候補)向け企業研修を今年初めて実施しました。

 この試みは、県教育委員会の要請を受けて、将来の教育現場の中核を担う人材のマネジメント力向上を目的に実施したもの。岡山県では従来、高等学校向けに同様の取り組みが行われていましたが、小・中学校を対象にした研修は今回が初の事例となりました。

 研修には県内各地から選ばれた主幹教諭10人(小学校7人、中学校3人、40代が中心。女性1人)が参加。5日間で会員企業5社を訪問しました。各社では、午前中は経営者による講話と企業見学、午後からは受入企業の幹部社員も加わって同友会形式のグループ討論を行いました。

 企業と同様、学校にも計画書や経営目標があるようですが、校長と教頭を中心に作成される例が多く、教諭間での共有が不十分だったり、校長が異動すると方針も変わるといったケースも少なくなく、学校の教育方針の継続性が担保できずに生徒や保護者が戸惑うこともあるそうです。

 また教員の多くは十分な社会経験がないまま教壇に立つため、生徒の職業観の涵養(かんよう)や保護者とのコミュニケーションの円滑化などが全国的に課題となっているとも聞きます。今回の参加教諭にも「家庭との信頼関係と協力体制の構築」「若手教諭の指導」「校内PDCAサイクルの実践」「ビジョンの共有」など、それぞれの課題を明確にした上で研修に臨んでもらいました。

 受講者がその日に学んだことを記入したレポートには、「今まで社会とのつながりに対する意識が低かった。数十年後にその子が豊かな人生を歩めるよう仕事に取り組みたい」「目標設定時に、その根拠と評価基準を決めておくことが大切だとわかった」「自分に足りないのは人に任せることだと気づいた」「上からの押し付けではなく、社員と一緒に理念をつくることで全員が主体者として行動できる組織が存在することに感激した」―など、学校と企業の組織運営の共通点を指摘した感想が多く寄せられました。

 一方、受入企業からは「同友会型の組織運営を理解してもらえるかどうか不安だったが、討議の内容やレポートに先生方の熱心な姿勢が感じられた。特に成果指標や目標管理に対する関心が高く、組織における幹部の役割を認識していただけたのではないか」―といった感想がありました。

 研修に先立ち、県教育委員会の担当者には岡山同友会の「社員共育大学」を見学して「共に育つ」ということを肌で感じてもらいましたが、地域の中小企業で多くの社員と経営者が共に働きながら学ぶ姿に感銘を受けていました。

 岡山同友会と県教育委員会は来年度以降も本研修を継続したいと考えています。

「中小企業家しんぶん」 2017年 10月 5日号より