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条例の基本課題になっていること

改めて振興条例制定の意義と課題を考える

 中小企業振興基本条例制定の意義と課題を改めて考察したいと思います。

 第1に、まず「条例」という形式をとること、自治体にとっての法律の形をとることの意義はどこにあるかという問題です。

 それは、中小企業振興を進めていくうえで、法律の力も借りて問題を解決することにあります。つまり、自治体職員は仕事を法の裏づけのもとに進めることができるわけです。中小企業振興を一過性の施策として実施するのでなく、計画的系統的な施策として取り組むことにつながります。

 さらに、自治体の外部に自治体としての姿勢を明確にすることも重要です。「この地域では中小企業が大事にされる」との実感を持ってもらうことですが、その実現のためには、自治体や地域に覚悟を持ってもらうことが大事です。条例制定が地域の覚悟の表れといえるでしょう。

 なお、条例をつくるのは確かに大変です。しかし、産業振興会議など恒常的な会議体を設けることによって、中小企業振興を関係者が一緒になって考えることで、振興事例が多く出され、中小企業振興を実施していくための起爆剤となりえます。結局、関係者にとって共にプラスとなるのです。

 第2に、理念条例であるがゆえの難しさがあります。理念条例とは、行政や地域の基本的な考え方、姿勢や枠組みを提示したもので、具体的なルールや数字をきめたものではありません。企業の「経営理念」に似たところがありますので、重要性は経営者にはピーンときますが、一般にはなかなか理解が及ばないのです。

 つまり、理念条例は、その地域、行政が中小企業振興を、地域にとって中長期的に極めて重要な課題であると位置づけ、問題解決に向けて不断の努力を行っていくことです。条例制定までにも問題意識や地域課題の共有など、当事者間で時間や労力をかけて行う必要があるし、条例を制定した後も同様に時間も労力も要するものになるのです。

 第3に、条例に基づく具体的施策の評価をどのような「モノサシ」で測るのか、という課題です。例えば、「5年以内に新規創業を何件増やす」といった量的な指標は数値化が容易で評価しやすいですが、数値目標では簡単に表せない質的な側面が重要です。

 中同協の企業環境研究センター座長・吉田敬一氏(駒澤大学教授)が「見えない政策」として表現していますが、政策を展開する際の土台である「人づくり、組織づくり」です。これが重要なのですが、なかなか見えづらい、測りづらいという現実があります。

 都道府県で中小企業振興基本条例を制定していないのは、東京都、高知県、佐賀県の3県のみ。また、市区町村レベルの制定数は現在、249市区町村(187市17区41町4村)、全自治体の約14%になっています。

 着実に増えています。理論面でも知恵を深めましょう(本稿は植田浩史・慶應義塾大学経済学部教授、大貝健二・北海学園大学経済学部准教授の諸論文を参考にしました)。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2017年 10月 15日号より

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