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【2017年中同協「採用と社内教育」特別調査報告】経営指針は企業の未来につなぐ羅針盤

人材確保と育成、定着率向上にも影響大

 企業における人材不足が深刻化しています。同友会景況調査(DOR)においても2010年頃から人材確保や社員教育を経営上の力点として捉えている企業が増え、とりわけ人材確保の指摘が急増しています。中同協・企業環境研究センターでは会員企業における採用と社員教育の状況をとらえようと、植田浩史・慶應大学経済学部教授をリーダーとした研究プロジェクトを立ち上げ、6月1日から30日にかけて特別調査を実施しました。本紙では企業の経営上の取り組みという点から紹介します(詳細結果はDOYUNET上でも紹介しています)。

DOR122号特別調査報告はこちらから

http://www.doyu.jp/research/dor/

<調査要領>

(1)調査時/2017年6月1~ 30日
(2)対象企業/中小企業家同友会会員
(3)調査の方法/同友会活動支援システム「e.doyu」のアンケート機能を活用し、直接入力を得た
(4)回答企業数/33,902社より2,009社の回答を得た(回答率5.9%)
(建設業319社、製造業490社、流通・商業593社、サービス業590社)

企業規模が大きいほど経営指針ある割合高い

 回答企業の企業規模は5名未満が3割、5名から10名未満、10名から20名未満がいずれも2割、20名から50名未満が2割弱、50名以上は1割弱という結果になりました。回答企業の過半数は従業員数十名以下でした。

 企業規模が大きくなるにつれ、経営指針、就業規則ともに「ある」と回答する企業の割合は増えています。

 社員の平均年齢は約8割の企業が30~49歳ですが、経営指針のある企業で平均年齢が低くなる傾向があり、30~39歳の層では経営指針が「ない」企業は24・5%に対して「ある」企業は41・7%と1・7倍の差がありました。

採用活動に取り組む企業の特徴

 採用活動は、「必要に応じて適宜採用を実施」している企業が53・2%と半数以上ですが、定期採用を実施している企業(毎年、ほぼ毎年定期採用を含む)は26・8%でした。定期採用を実施している企業は経営指針や就業規則がある企業の割合も高く、採用計画にもとづき社員を受け入れる体制の整備への取り組みも積極的であることも同時に示されています(図1)。

 2016年度の採用活動については、「新卒・第2新卒を中心」が25・7%、「中途採用(若年者・35歳未満)」が29・1%、「中途採用(中高年・35歳以上)」が15・8%、「新卒・中途にこだわらず採用」が22・7%で、「採用活動は行わなかった」企業は29・0%でした(図2)。

 頻度にかかわらず定期採用を実施している傾向が強いのは建設業と製造業、流通・商業で、製造業と流通・商業は新卒や若年者を対象とする傾向が高く、建設業は新卒・中途にこだわらずに採用している割合が高くなっています。

採用活動実施企業の6割が「次世代人材育成」を意識

 採用の目的は「次世代人材の育成」が60・1%と最も高く、「基幹業務の担い手」(43・4%)、「将来の幹部社員の育成・確保」(37・6%)、「長期経営計画への対応」(32・1%)と続きます(図3)。この設問は業種や経営指針の有無によって傾向が異なってきます。

 また、経営指針のある企業においては将来性を見込んだ目的を指摘する割合が高く、ない企業では周辺・定型業務の担い手、責任ある業務遂行のためといった現状対応に関連した項目への指摘が高い傾向にありました。また、就業規則の有無との関連は経営指針の有無と同様の傾向にあり、とりわけ「作成中」と回答した企業では「技術的な専門性の確保」「専門知識・資格の確保」といった付加価値を高める要素を含んだ項目の指摘する傾向があるようです。

回答企業における社員教育実施状況

 回答企業のうち4分の3で社員教育が実施されています。社員教育の対象として最も多いのが「新入社員」41・5%、「全社員」32・4%、「新入社員以外の若手社員」28・4%、「中堅社員」27・6%、「幹部社員」25・5%、「資格取得をめざす社員」が21・8%となっています。

 社員教育の実施と就業規則の整備は相関性がありました。全体では25%が社員教育を実施していないという結果でしたが、就業規則のない企業全体の68・6%で社員教育を実施していません。

 社員教育の目的では「社内のコミュニケーションの円滑化・向上」(98・4%)、「社員満足度の向上」(97・6%)、「社員の人格や教養の向上」(96・4%)を「大変重要」または「重要」と回答しています(図4)。

社員の3年定着率の高い企業の特徴

 2013年度に採用した正規従業員のうち、2017年まで働き続けている割合についてたずねたところ、36・5%の企業が80%以上定着していると回答しています(図5)。

 そこで、80%以上の定着率のある企業にどのような特徴があるのかを分析してみました。各設問項目の全体平均値を3ポイント以上上回っているものをまとめたものが図6です。

 これらの結果から、定着率が高い企業の特徴は「就業規則など基本的な労働環境が整備されていることを前提として、会社の方向性を経営指針で示し、経営幹部や上司が率先して実践している。さらに全社員対象の教育体制を視野に入れつつ、社員のやる気や意欲に応じて社内外への研修にも積極的に派遣できる体制が整っている企業。採用も採用計画、人事計画に則って新卒採用を定期的に実施、協調性や熱意のある社員を採用し、適性を見て配置する。入社後もOJTなどの日常的な指導と社内で支えあう風土の醸成が進んでいく」という企業像が浮かび上がってきます。

「中小企業家しんぶん」 2017年 11月 5日号より

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