トピックス

人材育成でアジアとの共存共栄をめざす金型企業~(株)リード技研 代表取締役 小川 登氏(神奈川)

【黒瀬直宏・嘉悦大学教授が迫る「海外戦略」】

(株)リード技研 代表取締役 小川登氏

 嘉悦大学教授の黒瀬直宏氏が海外展開をする会員企業を取材し紹介する「海外戦略」。第3回は(株)リード技研(小川登代表取締役、神奈川同友会会員)を紹介します。

製品

 (株)リード技研(従業員20名、川崎市)は金型部品を製作しています。経済産業省「工業統計」によると2014年の金型工業の事業所(従業者4人以上)数はピーク時1990年の半分に激減しています。3次元CAD/CAMなどのアジアへの普及により、標準的製品用の金型に関しては中国と日本製品の品質格差は急速に縮小し、コスト高の日本の金型業界の市場が侵食されたためです。

 (株)リード技研は公差±1μm(1000分の1ミリ)といった超精密加工技術を用いた金型の部品や試作用の金型部品を製作しています。金型の中でもこういう高度の加工技術や創造的発想の必要な分野はICTの適用だけでは足りず、中国企業が追いついていません。社長の小川登さんは半導体金型製造会社勤務で身に着けた、10種類以上の機械を操作できる技術を基に1981年に独立し、1984年(株)リード技研を設立、難易度の高い金型部品中心の製作で技術を磨き、そこから試作用金型の開発へと進出しました。小川さんは会社が休みの日にも1人で出社、新しい加工方法を試すなど、技術開発に余念がありません。自分が常に進歩していれば技術は追いつかれないと、海外からの視察にも工場はオープンにしています。

 このような(株)リード技研も2008年のリーマンショック・世界金融危機激化の時には売上の85%がなくなり、若い人を中心にやめる人も出、人員は半分になりました。その後の売上回復も思わしくなく、人材も市場も豊富な海外への進出を図ります。日本で人材を育成し、海外で生産するという考えです。最初は中国を目指しましたが、来日していたベトナムの「ドンズー日本語学校」の校長グエン・ドク・ホエさんと知り合い、ベトナムを工業立国したいという考えに共鳴します。ホエさんは京都大学、東京大学に留学経験がある人です。ベトナムへの関心を高め、ホーチミン市に近いバリア・ブンタウ省の省立職業訓練校との関係ができます。ここの教員の教育などを行ったりしましたが、貸工場を作るので来てくれという要請を受けます。同省は電力は豊富で、ホーチンミン市と違い人件費も安いところです。要請を受けてから4年目の2015年に「リード技研ベトナム」を設立、ベトナムではまだ製作が難しい精密プレス金型製作や精密切削加工を始めました。仕事は日本で受注したもののうち納期に余裕のあるものを行っています。

 現地の人員は7人で、横浜国立大学大学院を出、リード技研で4年半指導受けたベトナム人が副社長・工場長、ベトナムから(株)リード技研に3年間実習生として働いてた人が1人、訓練校の卒業生が5人です。現在も3年たったら「リード技研ベトナム」に行ってもらうという約束で実習生が来ています。アジアに進出した日本企業の多くが人材教育に苦労していますが、(株)リード技研は日本で教育した実習生を送り返すというシステムでこの課題に有効に対処しています。日本で研修をするのは工業立国に必要な人材を獲得するというベトナム側のニーズにも合います。日本企業の海外進出が地域の空洞化を引き起こす懸念のある中、意欲ある海外の若者が来てくれることでそれも防いでいます。

 小川さんは「中小企業が日本で大きくなるのは難しい。ASEANには土地も人もある。ないのは技術だ。日本の中小企業の優れた技術で人材を育成し、ASEANと日本の中小企業がともに発展を目指すべきだ」と主張しています。

(株)リード技研 会社概要

設立:1981年
資本金:2,490万円
従業員数:20名
事業内容:精密プレス金型部品加工、精密モールド金型部品加工、コネクター自動機部品製作
URL:http://lead-giken.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2017年 11月 5日号より

このページの先頭にもどる

トピックス

携帯用二次元バーコード
携帯対応について

更新情報RSS