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身元開示命令の是非を問う

民間が自主的ルールで運営するのが理想

 おや!ちょっと驚く記事を発見しました。

 転職者向けの口コミサイトで悪評を書かれた会社が、投稿者がだれかを明らかにするよう求める裁判を起こし、勝訴したというもの(「朝日新聞」2017年10月27日電子版)。

 四国のある会社が、社員や元社員から口コミ情報を掲載する転職支援サイト「転職会議」に、「管理職に全く管理能力はない」「社長はワンマン」などと書かれ、プロバイダーに投稿者の個人情報を開示するよう求めて提訴。高松地裁は8月末、会社への名誉毀損と認め、「意見・論評の前提となる事実が全く不明」として開示を命じ、そのまま確定しました。

 会社は提訴前、転職会議を運営するリブセンス(東京都品川区)に削除を求めましたが、「それほど厳しい内容ではない」として削除されませんでした。そこで、投稿者本人に削除を求めるため、裁判を起こしたという次第。

 会社側からすれば、「口コミ情報が企業に不利だから」でなく、「根拠がないから」という理由であれば、判決として妥当であると思います。しかし一方、匿名情報で成り立つ口コミサイトに、マイナス評価の投稿はできなくなるのか、という懸念も生じます。

 転職者向けの口コミサイトが登場したのは2000年後半。転職会議は2010年にサービスを始め、利用者約450万人、約75万社の口コミを掲載している大手の1つです。

 判例では、裁判所は個人情報開示を求める側に「書き込みが真実ではないことの立証」を求め、それができなければ開示を認めない傾向にあるといいます。その点で、高松地裁は「前提事実が不明」というだけで開示を命じているわけで、同様の判決が続くとは考えにくいというのが法律家の多数のようです。

 口コミ情報に詳しい井上一郎・江戸川大学准教授は、「サイト運営者が投稿ルールを明示してチェック機能を持ち、悪評を書かれた側に反論の手段を確保するなど、自主的に対策を取ること」を提案します。これは、反論権も尊重される口コミサイトの普遍的ルールになりえます。

 ところが、この枠に収まりきらないのが、例えば病院口コミサイト。厚生労働省は、特定の医療機関に誘導する意図のある医療機関以外が運営するウェブサイトを広告とみなし、規制の対象とすることを決めました。現在、さまざまなサイトが口コミ情報や病院ランキングを載せていますが、虚偽や誇大などの不適切な表現と判断すれば行政指導などを行います(「日本経済新聞」2017年11月2日)。

 例を挙げると、治療実績をもとにした医療機関のランキングサイトの体裁をとりつつも、特定の医療機関のサイトへの誘導で報酬が支払われているケースなど。これも規制対象とします。

 こうしたサイトの監視は、厚労省が外部機関に委託し、8月から開始したネットパトロールで行います。

 民間が自主的ルールで運営するにしろ、行政が介入するにしろ、情報収集手段として広く浸透した口コミサイトが有益な情報源であり続けるため、絶えず工夫を重ねる必要がありそうです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2017年 11月 15日号より

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