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復興再生を先導する 相馬ガス(株)代表取締役 渋佐 克之氏(福島)

【絆―復興をめざして】

相馬ガス(株)代表取締役 渋佐克之氏

 震災発生から5年目の節目に、福島同友会から発行された『逆境を乗り越える福島の中小企業家たち』(2017年2月24日発行・執筆は2016年秋)より、会員企業の復興の軌跡をシリーズとして数回にわたり掲載します。第1回目は渋佐氏の報告です。

使命感

 甚大な被害をもたらした東日本大震災と原発事故から5年6カ月が経過した。ここで一度立ち止まり考えを整理してみたい。あの時とこれまでを振り返り、これからどうしていくのかを明確にしたい。

 あの時、ガス供給の継続という使命感が社員たちを突き動かした。自主避難で南相馬市の人口が7万人から一時1万人未満まで減少する中で、数名の社員が地域に留まりガスの火を守った。1カ月後には多くの市民が帰還し5万人弱まで戻った。私たちは市民の生活環境を守る一翼を担ったのだ。ガスマンとしての誇りと使命感が私たちの会社のバックボーンである。それを再確認できた意義は大きい。

人手不足と資材高

 それからは、人手不足と資材高騰との戦いだった。グループの相馬市ガスの社屋は、震災のダメージで建て替えが必要となったが、震災の復興需要で建設業者はどこもてんてこ舞いで請負業者が見つからず、同友会のネットワークでようやく業者が確保できたが、資材高騰の影響で3割以上高い建設費を余儀なくされた。仮設住宅の建設が一段落すると、除染宿舎や復興住宅の建設が増え始め、ガス工事が繁忙を極めたが、人手不足の影響で十分なスタッフを確保できず、社員の業務負担は過重なものとなった。

 ガソリンスタンドは、震災前は主婦パートがスタッフの主力だったが、震災後はその多くが避難したため、シルバー人材に主力を担ってもらうこととなった。そのシルバー人材も誰かが退職すると後任の採用に難儀し、ガスの社員が交代で勤務せざるを得ず、営業時間の短縮などで対応せざるを得なくなった。

 これらの状況を打開するため、新卒者の採用に期待をつないだが、相馬地方の有効求人倍率は極めて高い状況が続き、地元企業の新卒者採用は困難を極めた。

 しかし、同友会の共同求人活動を積極的に活用し、高校の進路指導の先生方との懇談会などを通じて、先生方との関係づくりを進めた結果、2014年度・2015年度と連続して若干名の新卒者採用を実現することができた。

規制緩和の中で

 こうした中で、政府の規制緩和の方針の中で、電力・ガス自由化によるエネルギー市場の規制改革がすすめられているので、ガス会社も電気の小売り事業に進出し、総合エネルギー事業へと発展することが求められている。

 弊社は電気小売り事業への参入の方法として、代理店方式を選択した。新設発電会社をガスの顧客に紹介し、電気小売り契約を仲介し手数料を稼ぐ方式だ。本格的な発電事業への参入とは言えないが、現在の経営資源の範囲で、無理なく電気小売り事業に参入することができる。総合エネルギー事業への第一歩だ。当社のような小規模事業者には、このような無理のない方法から、段階的に規模を拡大していく方法しかないと考えている。

 地域復興の歩みは原発事故の影響で遅れが目立つが、南相馬市は確実に復興に向けて進捗していると考えている。本年7月に小高区の避難指示が解除され、少しずつだが住民の帰還も始まっている。そうした中で、相馬ガスグループは地域エネルギー供給の中核的な立場を保持していると考えている。これまでのガス灯油ガソリンに電気を加え、総合エネルギー事業としての歩みを始めたところだ。これからも地域ユーザーのエネルギー生活のワンストップサービス拠点として確実な発展を遂げていきたいと考えている。

総合エネルギー企業へ

 将来的には、水素社会構築による地域の本格的復興を主導したいと考えている。環境省の地域再エネ水素ステーション事業を活用し、グループ会社の敷地内にスマート水素ステーションを導入することが決まり、2017年の7月頃の完成予定で計画が進んでいる。(9月15日に稼動開始・民間では県内初)

 水素ステーションが導入されれば水素による燃料電池車の導入も可能となる。燃料電池車は水素と酸素を反応させて水を生成する過程で発生する電気を動力とする電気自動車の一種だが、水を生成する過程でCO2などの環境負荷物質を一切排出しない究極のエコカーであり次世代自動車の本命として期待されている。スマート水素ステーションの導入を契機として、水素社会構築の魁(さきがけ)の地としての南相馬市をアピールし、水素によるスマートコミュニティの整備や水素関連産業の集積地の整備による地域再生を目指したい。折しも、福島新エネ社会構想がスタートし、2020年までに福島県で燃料電池車1万台分の水素を作り、東京オリンピック・パラリンピックで世界に注目される東京へと供給する構想もスタートした。時代は水素社会へと動き出した。浜通りにおける水素ステーション第1号の導入が当社の将来展望を大いに切り拓いていくものと考えている。

 それは、ガス・灯油・ガソリン・電気・新エネ・水素と多様化する地域エネルギー市場において、地域ユーザーのエネルギー選択と快適なエネルギー生活をサポートする総合エネルギー企業として、相馬地方の人々の幸福で豊かな生活の復興と再生を先導する未来である。

相馬ガス(株) 会社概要

創業:1960年
資本金:9,600万円
従業員数:27名
事業内容:ガス事業
URL:http://www.somagas.jp/

「中小企業家しんぶん」 2017年 11月 25日号より

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