ライフラインを守る大切な仕事への責任と誇りをつなぐ仕組みづくりートマル電気工業(株) 代表取締役 都丸 亮一氏(埼玉)

【採用と教育】特別編第2回

 「採用と教育」をテーマに各社の取り組みを紹介している本企画。今回は特別編として、中同協企業環境研究センターで実施した特別調査「採用と社員教育」の一環として企業ヒアリングした内容から紹介します。特別編2回目はトマル電気工業(株)代表取締役の都丸亮一氏(埼玉同友会前共同求人委員長)に社内での取り組みについて聞きました。

 トマル電気工業(株)は、1947年の創業から一貫して水力発電所や変電所の建設およびメンテナンスに携わってきました。電力供給にかかわる同社の事業は、専門的な知識と高度な技術が求められます。現在、同社は従業員51名で埼玉県に本社と営業所、群馬県に支店と工場・研修センターをかまえています。

新卒採用は継続的な共同求人活動で

 代表取締役の都丸亮一氏は、大手自動車メーカーの勤務を経て、1991年に祖父が創業した同社に就職しました。当時、同社では、人材が採用できない、定着しないといった問題を抱えていました。こうした問題を解決したいと考えていたところ、知人から埼玉同友会への入会を勧められ、入会後の1992年から共同求人活動に参加するようになりました。

 新卒採用に重きをおいている理由は、業務で必要とされる技術が特殊であることがあげられます。同業他社で経験を積んできても同社の業務に対応できるとは限らず、新卒者を自社で育てていく必要がありました。しかし、新卒者の継続的な採用は容易なことではなく、日ごろから学校と信頼関係を構築していくことが重要です。

 定期的に数名ずつ新卒採用を続けてきた結果、現在では全社員の約65%が共同求人での採用者となっています。

社員提案による新卒社員教育システム

 新入社員は埼玉同友会の合同入社式と2日間の新入社員研修に参加します。その後社内研修として、同社の経営理念や事業内容、働くにあたっての心構え、安全教育を受けます。2週間程の研修を修了すると現場でのOJTへと移り、社歴10~15年の先輩社員が1年間新入社員の教育にあたります。

 かつては、新入社員は1年間の研修期間中に多数の現場を回ってOJTを行っていましたが、社員からの提案で現在のような先輩社員が後輩社員を育てる仕組みができてきたそうです。1年間先輩社員の背中を見て学んだ新入社員は、ライフラインを支える大切な仕事への責任感も同時に引き継いでいきます。あらゆる仕事に対応できる人材が揃っていると信頼されていることもトマル電気工業(株)の強みの1つです。

さらなる成長をめざして

 また、OJTだけではなく、電気工事士をはじめ電気主任技術者、電気工事施工管理技士などの資格取得も奨励しています。講習会への参加費用や受験料を会社が負担したり、資格手当を支給したりするなど、資格取得へのバックアップ体制も整えてきました。

 現在の課題は、次世代を担う幹部の育成です。同社の将来の発展にもかかわるので、都丸氏自らが幹部の候補者の教育にあたっています。

特別調査「採用と社員教育」プロジェクト委員 日本大学商学部准教授 山本 篤民

トマル電気工業(株) 会社概要

設立:1947年
資本金:2,000万円
従業員数:51名(2017年5月現在)
事業内容:水力発電所・変電所の電気工事・水力発電所・変電所の機械工事・水力発電所・変電所の機器、設備の保守点検・水力発電所・変電所の機器、設備の各種試験・一般電気工事・鋼材加工組立・土木工事
URL:http://www.tomaru.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2017年 12月 5日号より