活力ある企業の源泉は健康な社員から~会員企業の健康経営取り組み状況

【同友会景況調査(DOR)2017年7~9月期オプション調査より】

 2017年7~9月期の同友会景況調査(DOR)では、会員企業の健康経営への取り組み状況について、オプション調査を行いました。その結果について報告します。

〈調査要項〉

調査時点 2017年9月1~15日
調査対象 2,379社 回答企業 1,002社(回答率40%)(建設172社、製造業319社、流通・商業302社、サービス業200社)
平均従業員数 (1)38.6人(役員含む・正規従業員)(2)30.0人(臨時・パート・アルバイト)

「健康経営」って?

 同友会では社員が生き生きと目標を持って自主的に働き、働くなかで成長する企業づくりを「人を生かす経営」の実践を通してめざしています。そのためには社員の心身の健康が維持できる労働環境であることが前提になります。

 経済産業省でも「健康経営(※社員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること)」に積極的に取り組んでいる企業を「健康経営優良法人」として認定する制度をスタートさせるなど、従業員の健康管理や健康増進を重要な経営課題として捉える「健康経営」という考え方が注目されています。

「健康経営」の認知度ー名称、内容ともに知っている企業が4割強

 まず、「『健康経営』をご存じですか」、という問いに対して、「名称、内容ともに知っている」と回答した企業は44%でした。「名称、内容ともに知っている」と回答した企業のうち、「(健康経営に)取り組んでいる」企業が37%、「取り組む予定」の企業は26%、「取り組んでいない」企業は37%でした。認知度、取り組み状況は企業規模が大きくなるほど高まる傾向にありました。なお、「名称のみ知っている」が22%、「名称、内容ともに知らない」が34%でした。(図1)

 また、今後の取り組みについてたずねたところ、「現在の取り組みを拡大・推進していきたい」と回答した企業が24%、「現在の取り組みを維持していきたい」が20%、「今後取り組む予定」が21%、「いずれ取り組みたい」が32%という結果になりました(図2)。

取り組む企業の8割が「従業員の働く意欲向上」を意識

 前述の健康経営の「名称、内容ともに知っている」と回答した企業のうち、「取り組んでいる」または「取り組む予定」と回答した企業に、取り組む目的についてたずねたところ(複数回答)、最も回答が多かった項目は「従業員の働く意欲向上」で80%でした。続いて「業務効率化・労働生産性の向上」が61%、「優秀な人材採用・定着のため」が49%となっています。(表1)

 取り組む目的は業種によって傾向が異なり、建設業では「優秀な人材採用・定着のため」「企業価値・イメージの向上」が全業種よりもそれぞれ10ポイント以上高くなっています。DORでも指摘されているように、建設業は経営上の問題点として、「従業員の不足」「下請業者の確保難」「熟練技術者の確保難」をあげる企業がほかの業種より高くなっていることから、これらの課題を踏まえた取り組みであることがうかがえます。

 また、製造業では「業務効率化・労働生産性の向上」を指摘する割合が高く、健康経営の推進においても付加価値の増大を意識した取り組みが目立つ結果となりました。

製造業、サービス業の6割以上で「長時間労働対策」に取り組む

 同様に、具体的な取り組みについては「健康診断の受診」が最も多く(95%)、「長時間労働対策」が55%、「禁煙・受動喫煙対策」が48%となりました。「経営理念・方針に社員の健康対策を明記している」と回答した企業も25%ありました。

 業種別で特徴が出ていたのは製造業で、「長時間労働対策」を選択した企業は全体で55%のところ、製造業は64%、サービス業は61%と他業種よりも高い割合となりました。「禁煙・受動喫煙対策」では製造業は61%(全業種48%)、「医師・保健師など関係機関との連携」は製造業が36%(全業種24%)と抜きん出て高い割合になっています。

 サービス業も「感染症対策」は全業種8%のところ17%と2倍以上の割合、「経営者による面談」は32%(全業種21%)と、特徴ある結果が出ました。(表2)

 企業規模別において、100名以上の企業は「長時間労働対策」が全規模55%のところ71%、「感染症対策」が全規模8%のところ21%、「外部相談窓口の設置」が13%のところ29%、「医師・保健師など関係機関との連携」が全規模24%のところ46%でした。企業規模が大きくなるにつれ、個別対応よりも組織としての取り組みにシフトしていくようです。

計画的に労働環境整備・改善をすすめよう

 具体的な取り組みを業績別の傾向で見てみると、前年同期と比較して好転した企業は「禁煙・受動喫煙対策」57%(全企業48%)、「外部相談窓口の設置」20%(全企業12%)、「医師・保健師など関係機関との連携」37%(全企業24%)の項目が高いことがわかりました。これらの取り組みは、計画を立て、対応する担当者、部門の意識的なかかわりが必要とされるため、計画的、戦略的な経営が求められるといえます。

 全体的に「健康経営」への取り組みは、これから整備され実践が広がっていくことが期待される結果となりました。業種や企業規模による特徴もあり、取り組み推進の度合いはそれぞれですが、実情に応じ計画的に実践をして「人を生かす経営」に取り組み、社員が主体的、能動的に働ける環境が整備された企業づくりをめざしていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2018年 1月 15日号より