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M&Aと事業承継の実例 (株)楠本浩総合会計事務所 代表取締役/一般財団法人 日本M&A推進財団 理事 白川 正芳

【連載 福岡事業承継塾】第6回

 事業承継にかかわる本連載。(株)楠本浩総合会計事務所代表取締役の白川氏よりM&Aについて紹介します。

 4年前のある日、お付き合いの長いM社長から、私の携帯に電話がかかってきました。

 「いろいろと考えたけど会社をたたもうと思う。私も病気がちで後継者もいない。そろそろ潮時かなと思って」という内容でした。M社長が営むのは牛乳宅配事業で、お世辞にも大きい会社とは言えません。朝も早く重労働です。数年前に冷蔵設備に投じた負債も手元資金で賄えなくもないでしょう。

 そんな状況が一瞬のうちに私の頭の中をめぐりましたが、次のM社長の言葉にハッとしました。「ただ、500件ほどのお客様に申し訳なくてね」

 その言葉を聞いた私は「M社長、会社をたたむのではなく、引き継いでくれる会社を探しませんか?M&Aです」それからわずか3カ月後、無事にM社長は近隣の同業者に会社を譲渡し、500件のお客様も、配達をしていた社員も守ることができました。清算していたら手元にお金は残らなかったはずのM社長の手元にも、数百万円のお金が残ったのです。

 これは決して特殊な事例ではありません。しかし、多くの経営者が「うちのような小さな会社はM&Aは無理」とか「M&Aには莫大な費用がかかる」といった誤解をしており、誰にも相談せずに会社を清算するケースが近年急増しています。

 今、日本の中小企業の7割近くが後継者不在だと言われています。地方に行くほどその傾向は強く、そのためにまだまだ可能性のある会社が清算してしまうのです。会社を清算すると、雇用の場が消失し、たちまち社員やその家族が路頭に迷います。さらには取引先の業績も悪化し、地方経済が疲弊、引いては日本全体が疲弊していく負のスパイラルへとつながります。

 合わせて、日本が世界に誇る2万社以上存在する100年企業の歴史や文化、伝統を失う危険性までもはらんでいるのです。これは国家にとっても大変な損失となります。欧米型のM&Aが企業を商品としたマネーゲームの側面を持っているのも事実であり、ブローカーまがいの自分の利益のみ追求するようなM&Aの斡旋業者も存在します。しかし、一方でM&Aは今後ますます中小企業の出口戦略において重要性を増してくるのです。

 だからこそ経営者の皆様には、M&Aに関する正しい知見と誠実な相談窓口を持っていただきたいと願っています。

「中小企業家しんぶん」 2018年 2月 15日号より

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