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共通点は経営者の視点と実行力【エネルギーシフト(ヴェンデ)岩手の挑戦】2

 岩手同友会が行った第4回欧州視察についてのシリーズ第2回を紹介します。

 スイス北部の山間部、チーズで有名なエメンタール地方のメルヒナウ村。人口1500人ほどの小さな村で、100頭を超える乳牛を飼い、チーズ工場に牛乳を出荷しているハンス・ドゥッペンターラーさん(67)は、同じ酪農経営者に呼びかけ、4人で地域熱供給網を立ち上げました。しかし2009年にスタートしたこの熱供給網には、最初から地域の理解があったわけではありません。ほとんどの資金を金融機関から連帯保証で用立てし、出力700キロワットのチップボイラーと1・7キロメートルの熱供給網の配管を自分たちで工事、設置しました。

 「誰かがやらないと決して変わらない。例え反対されても、大事なことは誰かが貫かなければならない」。そう自慢げに話しながら見せてくれたモニター画面には、ある家の今日1日の熱供給量グラフと使用機器が表示されました。「この方は1人暮らしのお年寄り。朝何時に温水を使ったかが1目でわかる」

 IoTの活用で熱利用の状況が把握できるため、24時間体制で生活を見守ることができます。地域住民の命を守る供給網を実現しています。

 この施設から熱供給をするのは、道を挟んで隣接するチーズ工場、幼稚園など銀行や学校など公の施設、そして30数戸の一戸建てや集合住宅など供給網に接する施設です。最初は様子見だった住民も熱供給を受けたいと1軒、また1軒と手を挙げる住宅が増えています。

 また、チーズ工場の屋根には住民からの出資によってつくられた70平方メートルの太陽熱温水器が設置されています。太陽光エネルギーを使うことで木質燃料の消費量を減らし、年3・5トンもの化石燃料の節約につながっています。また興味深いのは出資金の配当と払い戻しが、チーズで現物支給されることです。

 チーズ工場の販売所には数十種類の乳製品の山々。育て上げた乳牛から生まれる新鮮な牛乳を生乳のまま域外に出さず、付加価値を加える。仕事と雇用をつくりだし、地域にお金を残し、地域の暮らしを次世代に紡いでいく具体的な取り組みが明らかに見えました。

 ドゥッペンターラーさんの畜舎は、屋根全体に太陽光発電パネルが設置され、干し草の乾燥や搾乳器もすべて電源は再生可能エネルギー。しかも全自動で目に見える形でIoT技術が活用され、まさに食料とエネルギーの自給が独立して成り立っていました。

 私たちとの共通点は経営者としての視点、そして実行力でした。小さな村だから、人口が少ないからと嘆くのではなく、地域の暮らしを支え、生み出すエネルギーシフトはこうして1人の経営者の人生とともに、使命感を持って歩んでこそ実現するものなのだと確信します。

「中小企業家しんぶん」 2018年 2月 15日号より

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