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次世代のために今、決断すべきこととは

エネルギーシフト(ヴェンデ)岩手の挑戦【4】

 岩手同友会が行った第4回欧州視察についてのシリーズ第4回を紹介します。

地球上に住めなくなる危機

 私たちがこれまで訪れたオーストリアのランゲンエッグ村、クルムバッハ村やスイスのメルヒナウ村などの人口1000人前後の小さな村々ではどこでも、利権や矛盾をはらむ中で持続可能な地域を求め、その地域の一人ひとりの大きな決断や覚悟がもとになり、歴史をつくっていました。

 196カ国の採択で決められたパリ協定には、産業革命前からの気温上昇を2度より低く抑え、1・5度未満を努力目標とすることが掲げられました。しかし、世界的な人口爆発により、2100年には5度か6度の上昇になり、世界に住むほとんどの人々が、環境難民として生存することが難しくなるという衝撃的な研究もあります。

セクターカップリングの壁

 今回の視察ではドイツの「セクターカップリング」という概念をはじめて知りました。セクターとは部門を指し、(1)エネルギー、(2)熱、(3)交通のそれぞれの部門を示します。それをカップリングさせることで、電気をエネルギー源だけではなく、あらゆる技術に活用し、より柔軟に社会全体で運用していこうという考え方です。

 福島第1原発の事故直後に、ドイツ議会は全会一致で2022年までの脱原発を決定。2050年までに、CO2排出量を90年比で95%削減することを掲げています。実際に再エネの量は毎年どんどん増え、昨年には35%を超えました。風力と太陽光は価格が非常に安くなり、市場原理でも成り立つようになってきました。ただ「熱」と「交通」の部門では、再エネでの電力活用がまだまだ難しい状況です。

「再生可能エネルギーで進める」と決める

 このままでは目標とする値を達成するのは2150年とも言われています。そこでさまざまな議論を経て、国全体の総意として基幹電源を太陽光、風力、水力、つまり「再生可能エネルギーで進める」という決断をしました。そしてその再エネ電力で、「熱」と「交通」も賄おうと考えました。

 例えば電力が余った時に水素ガス化(Power to Gas パワートゥガス)し、足りない時に水素から電気をつくる(Gas toPower ガストゥパワー)。廃熱は地域熱供給網とカップリングしていく。交通では、電気自動車と電気取引市場がつながった形のスマートな充電ポストを社会的インフラとして整備、燃料電池車やガスエンジントラックにも使用。また電気からメタノール航空燃料をつくることも始まっています。そしてITやIoTでつなげ、電力市場の予測精度とリンクさせていきました。

次世代のために「私」に何ができるか

 先の目標を具体的に掲げ、何を使って進めるのかを明確にする。そこからさまざまなイノベーションが生まれ、予想もし得ないような技術革新が進む。こうしたセクターカップリングの考え方は、紛れもなく私たちの目の前のためではなく「次世代のため」に掲げられています。

 何で進めるかを決め、そして一人ひとりが、それぞれの地域のそれぞれの持ち場で、イノベーションを起こしていくことがエネルギーシフトの実現のための唯一の道ではないかと思います。

 持続可能性という言葉はドイツの森林で300年前に生まれました。日本ではまだ、「何をもってエネルギーシフトを進めるか」の議論が熱を帯びていません。次世代へ私たちが残せるものは何かを考えたとき、すでに答えは出ているように思います。

「中小企業家しんぶん」 2018年 3月 15日号より

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