事業承継4つの準備 辻本聡税理士事務所 税理士 辻本 聡

【福岡事業承継塾】第7回

 事業承継にかかわる本連載。辻本聡税理士事務所の辻本氏(福岡同友会会員)より事業承継に大事な4点について紹介します。

 会社が永続を目指す上では、避けて通れない事業承継。16年ほど中小企業の事業承継や相続のお手伝いをしていて認識したのは、老舗と言われる企業には、事業承継を進めるノウハウのようなものが存在するということです。

 中小企業が事業承継を円滑に行うためには、次の4項目を準備することが大切だと思います。

 まずは、最も重要な(1)経営者としての立場や役割の承継。

 培ってきた会社を経営する上での考え方(経営理念)、ノウハウなどを引き継ぐとともに、既存社員からの信頼を得ることが重要なポイントになります。

 代表が交代する際には、既存社員は、不安を覚えますし、後継者が代表として信頼に足るかも見ています。事業承継をうまく進めている会社を見ていますと、先代が、後継者が実績を出して既存社員の信頼を得られる機会をつくるなどの工夫を意識的に行っていることがあります。

 その会社は、先代が代表を退いた後も、後継者が経営を進めやすいように陰から支えている場面を見ますし、後継社長も先代に報告と相談をされている頻度が高いように感じます。一定の伴走期間があることは、円滑に事業の承継を進める上では重要なことだと感じています。

 次に(2)経営者としての立場の源となる自社株式や事業用資産を後継者に集中させることは後継者が安心して経営に取り組む上で大切なことです。

 自社株式に関しては、後継者が3分の2以上を確保できるように、そして、会社にかかわらない方が株式を保有しないようにすることが望ましいと考えています。現在、自社株式の承継を円滑に進めるための事業承継税制の改正の話が出ていますので、詳細について確認が必要です。

 そして、(3)先代の相続対策も会社を守る上では、重要な事項になります。

 先代の相続に際して、相続争いになってしまったため、会社が存続の危機に陥ってしまった相談も受けています。また、相続争いにより会社が経済的な損失を受けるケースもありますので、企業オーナーに関しては、相続対策も考える必要があります。

 最後に(4)先代が譲った後を考慮する必要があります。先代の功績に経済的に報いるとともに、承継後の立場も考慮する必要があると思います。

 私は、企業経営者が販売戦略と同じように事業承継に対して戦略的に取り組むことにより、会社が永続する可能性が高まるものと確信しております。事業承継は、避けて通れない重要な経営戦略の一環と考えて計画的に準備を進めてほしいと考えています。

「中小企業家しんぶん」 2018年 3月 15日号より