事業継承問題は二極化の傾向

2018年2~3月期 同友会景況調査(DOR)オプション調査 「事業継承問題」について(前編)

 2018年1~3月期の同友会景況調査(DOR)のオプション設問で事業承継問題について聞きました。この調査結果について2回にわたって連載します。今回は、過去のデータとの比較を交えた調査結果の概要を紹介します。今期調査の回答数は938件、過去2回の回答数は2013年1~3月期(以下、2013年調査)が962件、2007年7~9月期(以下、2007年調査)は931件とおおよそ同様のボリュームでの回答となりました。

約10年前との比較では世代交代進む

 経営者の経験年数を見ると、今期最も多いのは「10年未満」で29・9%、続いて「10年以上20年未満」で27・1%となりました。「20年以上30年未満」は17・9%ですが、2007年調査の24・0%から6・1%減少し、この減少分は20年未満の各層の増加につながっています。

 約5年の間隔での調査結果から、経営者の経験年数20~30年で事業承継が進んでいることが推察されます(図1)。

 代表取締役の年齢については、2007年調査は「50歳以上60歳未満」が最も多く4割近い回答(39・6%)がありましたが、2013年調査は32・9%、今期は28・6%と減少しています。逆に50歳未満の割合は増加しています。一方で「70歳以上」の割合は今期が一番多く(8・4%→8・6%→12・6%)、事業承継が進んでいる企業と、承継せずに経営者の高齢化が進んでいる企業と二極化していることが予想されます(図2)。

後継者が決まっている企業は44%

 後継者の決定状況は、「すでに決まっている」が44・3%と4割を超えています。続いて「いまだ決める時期ではない」が31・2%、「決めるべき時期にきているが決まっていない」が18・7%という結果になりました(図3)。

 「すでに決まっている」と回答した企業のうち、「後継者はどのような方ですか」という問いに対しては、「子ども」が61・9%、「役員・従業員」が28・9%という結果になりました。

 過去の調査との比較では、常に6割以上が「子ども」と回答していますが、「役員・従業員」と回答する比率がわずかながら高まっていることから、事業承継の形も少しずつ変化していることがうかがえます(図4)。

 また、「後継者が見つからなかった場合の対応は」との設問には「可能なら譲渡・売却したい」が62・0%、「その他」が31・0%、「廃業する」は6・9%で、過去2回の調査と同様の傾向、割合となりました。

5割の企業で「後継者育成」を実施

 事業承継の準備としてどのような取り組みをしているかについては、「後継者育成」が最も多く(50・5%)、「後継者を支える人材の育成」が40・4%と続き、「事業承継計画の策定・実施」と回答した企業も24・3%ありました(図5)。

事業承継で想定される問題「後継者の力量」

 事業承継の際に想定される問題はどのようなことがあるかについて、主な項目を3つ選択する設問では、「後継者の力量」71・4%、「事業の将来性」60・3%、「借入の個人保証」27・8%、「取引先の信頼維持」27・0%と続き、「候補者の不在」は17・2%となりました(図6)。

 過去の調査結果との比較では、「候補者の不在」がわずかに上昇しています。

 2017年度版の中小企業白書でも中小企業に差し迫った事業承継問題として、経営者の高齢化と後継者不在問題が指摘されており、企業においては事業継続を視野に入れた対策が求められるとともに、社会的な支援策の充実も重要な課題であるといえます。

「中小企業家しんぶん」 2018年 6月 15日号より