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創業70年、人育てで技術を伝え地域を守り、選ばれる企業をめざす 武部建設(株) 代表取締役 武部 豊樹氏(北海道)

【採用と教育】最終回

 「採用と教育」をテーマに各社の取り組みを紹介する本連載。最終回は武部豊樹・武部建設(株)代表取締役(北海道同友会会員)の自社と同友会での取り組みを紹介します。

 わが社は今年で創業72年目を迎え、私は3代目です。初代の祖父は石川県から入植し当初は農業と冬は造材業をしていました。父の代では小さな製材工場と建築を始め、その後は公共工事をメインに仕事をしていました。現在は住宅を中心とした木造建築業を行っています。私は32歳の時に父の急逝により社長になり、さまざまなことに悩む中で同友会を紹介され、1987年に入会しました。

 当社には3つの特長があります。1つめは高断熱・高気密の省エネ技術です。2つめの特長は、木に関わるノウハウの蓄積です。当社では使用する木材を今でも時々山に入って丸太で直接買い付けています。3つめの特長が民家再生です。入り口は解体です。重機を併用しながら、大工が手ばらしで解体していくためには、伝統構法を知らないとできません。民家の解体は大工の大切な勉強の場でもあるのです。木造建築に関する高い技能・技術を身に付けた大工が省エネ技術を駆使して北海道らしい民家の再生をする。大工の力こそ工務店の大きな競争力になると思っています。

業界全体で大工育成を

 3000社が加盟する地域工務店の全国組織JBN(一般社団法人全国工務店協会)で2017年に大工育成ガイドラインを策定しました。大工は1980年には93万7000人いました。その後大幅に減少していきますが、それを補ったのがプレカットという仕組みです。工場において機械で木材に予め加工をして、それを現場で組み立てることで大工の大幅な省力化が可能になりました。しかし、その後も大工の減少はさらに進み、2015年には全体で37万2000人。日本の大工はこの35年間で実に60%も減ってしまいました。

 若い大工志望者は大工を一生の仕事としてもらうためにキャリアパスを示す必要があります。平均技能曲線と収入曲線を描き、年齢と技能熟練度から年収を「見える化」しました(図)。頑張った人は高い曲線を描きます。資格取得時期の目安の他、結婚や住宅取得などライフステージも入れました。

 当社の初任給は17万円程度です。大工は先生にも親にも敬遠される仕事なので、他産業との給与格差を埋めなければなりません。若い人に払った給与は65才からの年金受給者の給与を減額してバランスをとるようにします。70才以降は、嘱託職員として生涯現役をめざしてもらいます。当社の81歳の大工さんは毎年私に「まだ会社にいていいの?」と聞いてきます。私は「元気でやる気があるうちは死ぬまでいてほしい。若い職人の見本になってほしい」と伝えています。彼は勤務時間など自己申告制で働いています。こういった働き方は職人の魅力でもあり、若い大工はそれを見ています。

工務店と大工はパートナー

 採用と育成はセットで考える必要があります。人を育てるにはお金がかかります。その育成費用は必要経費として一般管理費に組み込まなければならず、そのためには経営力の強化が絶対に必要です。

 また、若い大工が育っていく条件として、まず第1に仲間づくりです。大工の入職後3年間の離職率は48・3%で、一般製造業の28・3%と比較しても高いのです。ところが仲間がいるとつらい見習い期間を支え合うことができます。2017年に大工職人の交流の場として、「大工ネットワーク北海道」を8社で設立しました。これは企業横断的組織であり、技術研修やレクリエーション、イベント開催を目的としています。

 第2に修業の目安を作ることです。大工の技能士検定を受けると定着率が93%まで上がることがわかっています。自分の技能がどう伸びるのか、具体的な指標があることが大切です。

工務店がめざすべき大工はどういうものなのか。きちんと考えないとどうしても軸がぶれてきます。経営者がぶれると社員が退職する原因になります。経営者の求める大工像と若い大工の理想像のすり合わせが重要です。

 1000年以上にわたって日本の木造建築を支えてきた大工と工務店はお互いに最も信頼できるパートナーにならなければなりません。大工の技術は世界のトップレベルです。大工は本来夢のある仕事なのです。若い大工の育成は私のライフワークであり、また工務店のやらなければならない重要な仕事でもあると思っています。まだまだ道半ばですがこれからも一歩一歩大工育成の活動を進めていきたいと思います。

武部建設(株) 会社概要

創業:1946年
従業員数:30名
資本金:2001万円
事業内容:住宅をメインとした木造建築業

「中小企業家しんぶん」 2018年 6月 25日号より

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