人口減少など構造的問題にも知恵をしぼろう

現代に求められる中小企業政策の課題

 一般に「政策」とは、「公共体が主体となって行う体系的な諸策のこと」とあります。しかし、広い意味では、「現代社会におけるさまざまな問題を解明し、その対策を考えること」と解した方が良いでしょう。

 政策のねらいは「問題の解決」です。問題には、「社会の進み方が歪んでいる」という大きな問題から、「困っている経営者がいる」という具体的な問題、「制度を整えなければならない」など行政的な問題、産業振興のような「新しい対策を必要としている」問題など、対象の規模や問題の複雑さ、政治的社会的段階の違いなど、多様なものが含まれます。

 政策とは、経済社会の解決を必要としている課題の解決の方向・対策を示すことです。同友会では中小企業家の立場から問題の解決を考え、まとめたものを毎年作成しています。それが政策委員会で作る『2019年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言』です(詳細は中同協ホームページDOYUNET「政策・主張」に掲載)。

 さて、中小企業の課題は内部・外部環境の整備中心から構造的問題へ移りつつあります。資金をどのように確保するかという問題や税制問題などに加えて、人口減少によるマーケット自体の縮小や人手不足、高齢化といった構造的な問題により大きな比重がかかってきています。このような課題に対しては、中小企業にあっては自社のみで対応することは難しく、みんなで知恵をしぼり討議を重ねなければなりません。できれば、仮説としての「地域ビジョン」があれば論議しやすいのです。これは、何かに似た作業です。そう、中小企業憲章や中小企業振興基本条例の論議に似た作業です。政策委員会での「要望・提言」の議論は詳細を詰めるにしても、徐々に構造的な課題に入り、地域の課題に論点が移っていきます。最近、中同協や各同友会で政策委員会と中小企業憲章・中小企業振興基本条例の特別委員会が合同で開かれていることの要因であると考えられます。

 さらに、中小企業憲章の基本理念では、「経済やくらしを支え」「家族のみならず従業員を守る責任を果たす」「地域社会と住民生活に貢献し」「地域社会の安定をもたらす」といった中小企業の地域や生活における役割が強調されています。

 これは、「地域や生活を支える中小企業」という中小企業像の提示とみることもできます。競争的市場を媒介としながらも、人間性・地域性の原理の比重が徐々に増えるというのが、「地域や生活を支える中小企業」の構造的なイメージと言えます。

 そして、元中小企業庁調査室長の安田武彦氏(東洋大学教授)は、「重要なことは政策がかつてのように上から下へ流れるものではなく、中小企業者と政策当局で作り上げていくものとなることではないだろうか」と述べています(『経済論集』東洋大学、2013年12月)。

 中小企業に関わるものへの至言です。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2018年 7月 15日号より