現代によみがえるサービス~貨客混載の発想を呼び戻せ

 むかし確かにあったが、いまはない。そんな懐かしいものを現代によみがえらせたらどうなるでしょうか。もちろん、現代的条件に合ったものを想定します。

 例えば、貨客混載というやり方が目に留まりました。テレビの紹介を見て、今はこうなっているんだ、と妙に納得させられます。貨客混載とは、貨物と旅客の輸送、運行を一緒に行う形態のこと。鉄道や路線バス、タクシーなどで行われます。

 評者が子どものころは、客車だけでなく貨車の両方を連結した列車が走っていたような気がします。混合列車というらしいのですが、効率のよい大規模輸送を目的として客貨分離が進められ、廃止されました。しかし、地方での人口減少対策やバス・トラックのドライバー不足などが重なり、客貨分離が必ずしも効率的でない状況も見られ、21世紀に本格的な復活が見られているということです。

 制度面では、国土交通省が2017年9月に、乗合バス(路線バス)による貨物輸送の重量制限(350キログラムまで)を撤廃しました。

 例えば、十勝バス(北海道同友会会員)は、ヤマト運輸の宅急便を足寄町で路線バスに積み込み、陸別町にある十勝バスの駐車場まで輸送後、ヤマト運輸に引き渡しています。こうすることによって、十勝バスには新たな収入を確保することができるほか、バス路線維持による生活基盤の保全を期待できます。ヤマト運輸にも、片道35キロメートルのトラック走行距離削減によるCO2削減などのメリットがあります。

 それでは、貨客混載に取り組むメリットは何か。

 第1は、公共交通事業者の空きスペースを有効活用した損益改善が期待できます。収入は金額的なインパクトとしては大きなものではありませんが、定期的に一定額が確保できる安定した収入源となっています。

 第2は、物流事業者の業務効率化・サービスの向上が得られること。集配エリアのドライバーの滞在時間増加により、集荷時間の延長が可能になるなどサービスの向上が図られます。

 第3は、物流事業者の人材確保のハードルが低下することです。配達先までの荷物の輸送をトラックから自転車に移行することで、より幅広い人材での配送業務を担うことが可能です。

 第4に、CO2排出量削減による環境負荷が低減されることです。トラック輸送が鉄道やバスに代替されます。

 第5に、既存の公共交通というインフラを活用して小ロット農産品の低コスト輸送を実現することで、地域農産品の販路拡大やそれを通じた地域経済の活性化が図られています。

 将来、過疎地においては、公共交通事業者と複数の物流事業者が連携した発展型の貨客混載が必要となってくると考えられます。つまり、宅配便や郵便、新聞、食料品などの荷物をバラバラで配送するのはなく、荷物をまとめて公共交通で輸送し、データとともに域内輸送事業者にわたす仕組みです。

 こうした仕組みは、行政や公共交通事業者、物流事業者、地域企業・住民が協議を重ねて構築する必要があります(日本政策投資銀行『地域公共交通における新たな動き』2018年6月)。

 同友会会員が得意とする分野です。地域から必要とされるなら、イニシアチブをとるときです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2018年 8月 15日号より