戦力としての障害者雇用~生産性・品質も向上 (株)東海化成 代表取締役 景山 昌治氏(岐阜)

【あっこんな会社あったんだ】第6回

和紙産地のメリットを生かす

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された「美濃和紙」の産地・岐阜県美濃市。

 野鳥の鳴く緑豊かな山あいに(株)東海化成(景山昌治代表取締役、岐阜同友会会員)の本社があります。

 和紙の需要が細るなか、(株)東海化成は先代である父親が手すき和紙を内職としていた職人に対し、一家に1台ブロー成形機を貸し出し原材料も提供して、農業園芸用の苗のポットを製造するところからはじまりました。それは、一家総出で粘り強く紙すきをしていた家内工業制を維持し、失業を防ぐことにつながりました。

家内工業からグローバル展開へ

 その後、職人たちが高齢化し、グローバル化も進むなか、現在、県内3つの生産工場に集約し、中国・杭州にも生産拠点を置いています。創業以来農園芸生産資材にこだわり、1500種類の生産資材を製造。メーカーでありながら全国500社の取引先を持ち、販売網を確立しています。

 育苗のポットは、植木鉢の薄い樹脂製で、黒色が一般的ですが、(株)東海化成では47色。苗段階では品種の分かりにくい野菜苗などに活用されています。育苗ポット市場の占有率は3割を超え、生産量では国内トップ。

 「コストはかけずにキラリと光沢感のあるカラーポットで差異化を図りたい」との花苗業者の声にこたえて生まれた「プレミアムカラーポット」など、顧客のニーズを商品開発につなげています。

障害者雇用は親族から

 障害者雇用は1990年、知的障害を持つ親族に仕事を手伝ってもらうことからはじまりました。しかし、その後に採用した障害者は定着せず、2008年の岐阜同友会政策委員会の企業見学に参加した景山氏が、障害者の集中力や仕事の速さに感動したことが、採用再開のきっかけとなりました。

 しかし、現場は障害者雇用に猛反発し、なかなか理解が得られません。そこで、トライアル雇用配置型ジョブコーチを派遣してもらい、障害者を丁寧に指導し、熟練度をデータで「見える化」したことが現場社員を安心させてくれました。

6名の社員がジョブコーチ、全社の取り組みへ

 「障害者も戦力」と景山氏の固い決意のもと、社員に障害者を理解してもらう一環として、社員にジョブコーチの資格を取ることを奨励。現在ではジョブコーチは6名となり、障害者が7名働いています。

 障害者は不具合の影響を受けやすく、「彼らが調子よく作業する=良い製品ができている」で、「作業効率が下がった=隠れた不具合がある」ということがわかり、生産性や品質向上など現場の改善も進んでいます。

 今年9月には、最初に雇用した佐藤靖さんが、「平成30年度害者雇用優良事業所等の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰」の「優秀勤労障害者」として、表彰されました。「障害者を受け入れるためには、自分たちが変わり、環境を変えなければ」と、2014年に経営指針を発表し、障害のあるなしにかかわらず、可能性を信じ、一人ひとりの社員と向き合うことを、全社に広げています。

経営理念

1)美濃の地の自立型企業として変革をすすめ、継続・発展していく、強い会社
2)お客様に地域に喜ばれる仕事を誠実にとりくみ、社員一人ひとりが高い使命感をもって行動する、働きがいのある会社
3)深い信頼関係を土台とする、あたたかい会社

(株)東海化成 会社概要

設立:1974年
従業員数:53名
資本金:6,000万円
年商:15億2,000万円
事業内容:農業園芸用のプラスチック製資材の製造・販売
URL:http://www.tokai-kasei.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2018年 9月 15日号より