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中同協の動き

「中小企業家しんぶん」2003年 11月 25日号より

「検査マニュアル」改定で意見交換
>中同協が金融庁と懇談


 中同協は11月12日に金融庁と懇談を行いました。金融庁が「金融検査マニュアル別冊・中小企業編」改定で意見公募しており、中同協も意見書を提出、意見交換をしたものです。

 懇談ではまず中同協の意見書について説明。金融庁側からは、全体として基本スタンスは大きく変わらないものの、同友会の意見項目が「まさに現在検討していること」との認識が示され、中小企業経営・財務の実態をどのように見極めるか、を中心に意見交換。特に意見書の「中小企業の査定基準」にある「健全な財務」の評価については、「特別な事情のない限り、おそらく正常先になるのではないか」との感想も聞かれました。

 懇談出席者/(金融庁)上條検査局検査指導官、神吉検査局総務課長補佐など4名、(中同協)三宅東京同友会副代表理事、田中埼玉同友会政策委員長、国吉中同協専務幹事など5名。


「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」改定への意見

2003年11月12日 中小企業家同友会全国協議会

1、「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」への意見

(1)自己査定結果の検査を省略できる与信額の拡充
 与信額が2000万円(又は資本の部合計の1%のいずれか小さい額未満の者)以下の債務者については被検査金融機関の自己査定に委ねることができるとしているが、与信額の5000万円程度の債務者まで拡充すること。

(2)ランクアップ支援を主とした債務者区分の判断
 大企業は債務超過に陥れば、即経営破たんに結びつくケースが多いが、中小企業は債務超過でも存続できる場合が多い。東京都信用金庫協会の調査によれば、2000年3月末時点で、過去3年間連続して債務超過の法人先のうち、1年を経過した時点で経営が存続している法人の割合は96・3%との数値を示している。したがって、債務超過企業であっても、経営改善計画書が合理的に策定され、金融機関が債務者区分のランクアップ支援の意向があり、期間の利益を確保できていれば、すべて要注意先以上に評価すること。

(3)中小企業の査定基準
 貸出先中小企業の財務の健全性の評価基準をストックの見方からフローで経営が廻っていれば健全であると認定する方向に転換すること。返済を遅滞なく行ない、役員報酬が適正な水準であり、営業収支で利益を確保していれば、当該中小企業は健全な財務であるとの評価を基本とすべきではないか。

(4)リレーションシップバンキングとの整合性
 「リレーションシップバンキング・アクションプログラム」では、監督当局の規律づけとして自己資本比率規制等だけでなく、実態に即して「コーポレートガバナンスや経営の質、地域貢献が収益力・財務の健全性に与える影響等の観点もいれた、より多面的な評価に基づく総合的な監督体系を確立」することが謳われている。中小・地域金融機関の健全化は、借り手の犠牲の上に実施されてはならず、中小企業の健全化とともに達成されるべきである。その観点から中小企業については、画一的に財務内容のみで判断するのでなく、返済状況も踏まえて総合的に判断できる中小企業に適した別途の金融検査マニュアルを作成されたい。

 マニュアル別冊は、「中小・零細企業等の経営実態の把握の向上による適切な検査の運用確保のため」に作成され、大きな意義を有するが、多くの説明を要する個別の事例集が求められること自体が別の基準を必要としていることの証左である。検査官が事例集の例示にとらわれて、狭く解釈する恐れもある。特に、減点査定が中心で、当該中小企業への加点に対する判断に個人差が強く出る可能性がある。より安定した解釈、判断とするためにも大企業とは別の中小企業向け融資基準が求められている。

2、「金融検査マニュアル」への意見―中小企業向け「金融検査マニュアル」の提案

(1)自己資本比率算出での中小企業貸出リスクウェイトの引き下げ
 自己資本比率算出にあたってのリスクアセット比率について、貸出資産の評価を改めること。特に、中小企業貸出のリスクウェイトを引き下げること。例えば、中小企業の不動産担保部分のリスクウェイトを住宅ローン同様に50%に下げるべきである。バーゼル委員会の新BIS規制案は、標準的手法の計算方法では「与信額1億円程度未満の中小企業向け」については、一律100%から75%に下げるとしており、早急な導入が望まれる。

(2)自己査定における債務者区分判定での定性要素の重視
 債務者区分等の判定では、財務状況以外の定性要素として、当該企業の業歴や雇用状況、経営指針(経営理念・方針・計画)の確立状況、創造法・経営革新法・ISO等の認定状況なども勘案すること。

(3)貸出条件緩和債権について
(1)条件緩和債権の限定
 中小企業の貸出条件変更と貸出条件緩和を区別し、貸出条件緩和債権は要注意先の中でも財務内容が特に悪く、破綻懸念先に近いものとすること。多くの中小企業は返済と借換を繰り返す資金繰り返済で経営を維持してきたが、例えば、収益返済に変更するための債務の圧縮などの条件変更は貸出条件緩和債権とすべきではない。

(2)元本返済猶予債権の金融機関の自己責任での区分
 中小企業の元本返済猶予債権は、一定期間内は被検査金融機関の自己査定に委ね、検査の対象外とする。中小企業は当面の資金繰りカバーを目的とした条件変更も多く、実情を把握している個別金融機関の自己責任において一定期間は対処できる仕組みの方が合理的である。

(3)保証付融資の条件変更の特例
 保証協会保証付融資や安定化特別保証融資の条件変更は、貸出条件緩和債権とみなさないこと。保証協会付融資は中小企業育成という信用保証理念に基づく政策融資であり、安定化特別保証制度は貸し渋り対策として実施されており、深刻化する不況の中で保証期間の延長などの対策が政策的に認められているので特別な措置をとるべきである。

以上

 

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