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中同協の動き
「中小企業家しんぶん」 2013年 5月 15日号から

民法改正における個人保証問題に
中小企業は声を高めるべき

日弁連主催「民法改正シンポ」での発言より

中同協副会長・(株)紀之国屋代表取締役 中村 高明氏(福岡)


 4月23日、東京・弁護士会館でシンポジウム「民法(債権法)改正における個人保証規制と債権譲渡の譲渡禁止特約等の制度の行方」(主催・日本弁護士連合会)が開かれました。

パネリストとして中同協副会長中村高明氏が出席しました。以下、発言要旨を紹介します。

1.私の個人保証問題の経験―なぜ金融アセス法制定運動に取り組んだか

 私は39才で独立し、運転資金500万円が必要となり、ある地方銀行に融資をお願いしたところ、私の個人保証、自宅の担保、さらに第三者の連帯保証が必要であると言われました。個人保証、物的担保もあるのに、なぜ第三者の連帯保証が必要なのかと尋ねますと、「事業を始めたばかりでまだ信用がありませんので必要です」と言われました。やむなく寝具店の社長にお願いし、500万円の融資を受けることができました。その後、よくよく考えてみると、逆に寝具店の社長から連帯保証の要請があると断れない。これは一種の融通手形だ。どちらかが破綻したら2人とも破綻してしまう。だから第三者の連帯保証は禁止しなければならないと思います。

 また、90年代バブルがはじけ、金融機関は不良債権をかかえ、拓銀などの破綻が続き、金融機関の統合が始まり護送船団方式が終わります。一方、BIS規制により、国際取引をする金融機関は自己資本比率8%以上必要と決められ、日本の金融機関は自己資本比率を低めてしまうリスクのある中小零細企業には「貸し渋り」「貸し剥がし」が横行しました。私の友人も都銀から「貸し剥がし」にあい破産して行きました。

 私たちは金融アセスメント法制定運動を起こし、金融機関と私達は対等なビジネスパートナーであり、不公正な取引慣行(経営者保証、物的担保、第三者の連帯保証等)を是正すべきだと、101万名の署名を集め、1008地方議会からの意見書を国へ提出しました。法はできませんでしたが、リレーションシップバンキングの機能強化が進み、地域密着型金融が始まりました。事後、保証協会も原則として第三者連帯保証を禁止としました。

2.「第三者の連帯保証を民法で原則禁止にすると、中小企業は融資を受けることが困難になる」との意見についての考え方

 そもそも、金融機関のみが経営者保証、物的担保、第三者の連帯保証を取って、リスクを負わないのは納得がいきません。私たちは商取引をする場合、債権回収のため物的担保や個人保証を取ってはいません。経営者の人となりや考え方、経営方針など、会社訪問で判断し、あるいは興信所にB/S、P/Lなどの調査依頼を行って、売掛の信用供与額を決めています。

 金融機関も融資先の経営者の人となりや経営姿勢、経営指針、時代の変化に即応した事業価値、従業員の状況などを掌握し融資すべきで、経営者保証、物的担保、第三者の連帯保証を取るのは不合理で改革すべきです。

 2010年6月に閣議決定された中小企業憲章の「行動指針・6」に「金融供与に当たっては、中小企業の知的資産を始め事業力や経営者の資質を重視し、不動産担保や保証人への依存を減らす。」と明記されています。実現すべきだと考えています。

3.「中小企業の事業価値について正確な情報を得ることができない」との批判にどう応えるか

 これも、中小企業憲章の「行動指針・6」に「中小企業の実態に即した会計制度を整え、経営状況の明確化、経営者自身による説明能力の向上、資金調達力の強化を促す。」と明記されています。憲章の具体化として、新しく「中小会計要領」が決められました。

 中小企業家同友会では、経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)の成文化運動を行っています。また、中小会計要領による決算、B/S、P/Lを自ら説明できる能力を養成し、金融機関への報・連・相を徹底することを申し合わせています。金融機関との密接な関係ができれば、金融機関も正確な情報を得ることができるようになります。私たちは、個人保証の実状をつかみ、自らの経営体質強化と並行してこの問題を大いに喚起していくべきと考えます。

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