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シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」
「中小企業家しんぶん」2002年1月5日号より

シリーズ3

せまられる直接償却、金融庁の査定厳しく


金融庁検査で確実に落ちる企業の格付け

 11月から都市銀行に対する金融庁の特別検査が進み、「要注意先」*を「要管理先」*に格付けを落とすなど、各行の貸倒引当準備金を増やすような厳しい査定が行われているといわれています。

 ある都市銀行の融資担当者は、次のように話しています。「検査マニュアルの基準は抽象的であいまい。通常の金融庁の検査でも、担当官によって対応が全く違うのが現実です。検査のため、われわれは足切りで抽出した、たとえば貸し金10億以上の貸出先について、会社概要や各行の分担、主力・非主力の区分、貸し金の中身がたとえば法定耐用年数を越えた貸出になっていないか、返済猶予や金利減免があったかなど、1本1本について1枚のペーパーにまとめる作業をします。

 検査官は支店長・部長クラスを前に1つ1つ検証し、投げかけられる疑問にこちらは各種資料で即応する。『(自己査定が甘くて)まったく話にならない』と言って、作成した資料の全面見直しを迫る担当官もいます」

 「『中小企業の7割が赤字企業』といわれるように、中小企業でも業況が非常に安定していて、いわゆる超優良企業に近い企業以外は、要注意先以下に格付けされてもおかしくはありません。検査が入ると、資料作成で土日出勤、正月も休めなくなります。法人営業部長などはぴりぴりしています。

 検査では自己査定の甘さが追及され、コンピューターに入っている格付け処理のプログラム(ロジック)に手を入れざるをえなくなってくる。これまでより以上に企業の格付けが厳しくなることは明らかです」

不良債権はこう処理する

 不良債権の「間接償却」とは、貸倒引当準備金を計上する方法で、「直接償却」とは債権放棄や貸出金回収をすることです。もともと銀行では、「経営改善計画書」を企業に提出させることなどにより、企業の格付けを上げ、不良債権化させない努力をしていますが、現在、都市銀行の不良債権の早期最終処理でせまられているのは「直接償却」です。

 法的整理は、破産法による清算や競売法による競売、会社更生法や民事再生法による企業の再生、RCC(整理回収機構)への債権売却、任意整理は債権放棄や私的整理、解散による清算があります。

 「具体的には、まず債権の無担保部分をなくすため、追加担保をとったり返済を迫る作業をします。そして新規貸出はしない。あとは格付けに応じた金利の引き上げです。当然格付けが下のところほど金利要求を高くする。そしてそういっためどのない債権は担保が付いたまま譲渡する。銀行に体力があれば、額面の2―3割で譲渡されることもある。

 銀行にとってはそれで損金が確定し、結果として税金対策になっている。空前の利益をあげていながら、ほとんどの銀行が納税していないのはそのためです。譲渡先は内部にも詳しく知らされてはいませんが、米銀がうしろについている投資会社のようです」

都市銀行との付き合い方

 「都市銀行は今、企業を育成することはできません。リスクが大きく、そういう案件が通らないのが現実です。目先の利益しか考えていないので、行員減らしもどんどん進めます。一方で経営者に系列のコンサルタントを年間契約2000万円等で紹介すれば、担当者の成果になります。ですから、中小企業の経営者の皆さんは都市銀行に生命線を握られないようにしたほうがいいと思います」

*「要注意先」とは赤字企業及び1カ月の返済延滞等回収に注意する先。「要管理先」は業況低調もしくは不安、財務に問題があり、元利金が事実上延滞し、貸出条件の変更のある先。

(つづく)

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