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シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」
「中小企業家しんぶん」2002年2月25日号より

シリーズ8

金利3%の攻防―信金の存亡かけた貸出


 再編が進む信金について第32回中小企業問題全国研究集会第17分科会パネリストの1人、小野澤日興信金理事長の報告を中心に、金融庁の取材も含め紹介します。

3%金利は至難の技

 「自己資本比率から言えば4〜5%の金利が取れれば、貸しても、ある程度リスク回避できるが、3%台で実質金利を回すのは至難の技です」と語るのは、分科会パネリストの1人、小野澤幸雄・日興信金理事長です。

 氏はまた、「今、金融機関にとって不良債権を作ることは一番遠ざけたいことです。要注意先の中でも金利減免や条件変更のある要管理先は3倍の引当を積まねばならず、自己資本比率を下げないために貸出はお断りすることになる。しかし、これでは信金の社会的使命は果たせない。都内500メートル〜1キロが信金の1店舗当たりのエリアで、ここに徹し小口多数融資でリスク分散しているところは健全。実質破綻先でも融資の道を開いていきたい」と話しています。

信金の健全性は?―金融庁

 昨年9月に金融庁が発表した信用金庫の総与信の査定状況では、自己査定と金融庁の査定が大きく違っています。[1]〜[4]分類のうち、個別に適切なリスク管理を要する資産である[2]分類が9985億円、最終の回収に重大な懸念が存在する[3]分類が3011億円増えるなど、これらに伴う追加償却・引当額は4490億円増加しています。今年度に入り12金庫、39信組が破綻、現在破綻公表分も含め356信金が活躍。金融庁は信金・信組に対し日々モニタリングを行い、財務状況をチェック。ペイオフ解禁に備えています。

 金融庁監督局の担当者は「経営の健全性確保はどの金融機関にとっても大切。経営規模が大きいからいいわけではない。各種指標がいいことも大切ですが、地域密着型金融機関の場合、情報の開示を行い経営スタンスが明確なこと、地元の信頼があるところかどうか、その評判も重要な選択のポイントになります」と話しています。

自己資本比率アップが経営目的ではない

 東京都信用金庫協会では「信用金庫経営の健全性検討委員会」を設置。その中間答申で「協同組織金融機関は利益の確保、拡大が経営の最優先目標でなはなく、自己資本比率を高めることも事業の目的ではなかった」とし、創立の原点「銀行からの融資が期待できない人々がお互いに力を合わせて会員相互の資金融通を目的として築きあげられたもの」を顧みれば、金融不安が渦巻く中、中小零細企業向け貸出の期待を裏切ることなく「その責務を果たしていく」と表明しています。

 また、信金らしい健全性の尺度として、(1)地域主義の確立(2)多数者利用とリスク管理(3)公共性・信頼性を高めるとの観点から、重点地区設置と地区別預貸率、融資上限や小口多数取引率、制度融資取扱比率などを提案しています。

信金は「中小企業の再生工場」

 小野澤氏は信金の役割について、次のように話しています。「私は信用金庫に入ってどうすれば貸せるかを始終考えさせられました。私にとって信金は最初から中小企業の『再生工場』でした。定量的に融資をすれば融資先が夜逃げをしていなくなってしまうということになりかねない。定性分析の中に店舗長の人間性はあると思います。『世話になっている○○さんの目が黒いうちに元金だけは返そう』と本気で思っておられ、不良債権は多くてもロスは少なかった。オフバランス化(直接償却)の議論は、金融機関は中小企業の首吊りの足をひっぱって放り出せということです。現在当金庫では破綻懸念先を支援すべく、審査部に2名引き上げて特命事項を与えています。大事なのはリレーションシップ(人間味のある預貸取引)。簡便・迅速・誠実が融資の3原則で、リスクを超えないと誠実ではない。保証協会をつけている間は誠実ではない。ですから地域密着であるためには『信金は預金量5000億以上になってはいけない』(由里宗之・中京大学商学部助教授)との意見に賛成です。顧客から理事長の顔が見えなくなってしまうからです」

 中小企業経営にも通ずる信金の経営理念は、金融機関のあり方を改めて教えてくれます。

(つづく)

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