
シリーズ3
信金数:5年で半分に
店舗削減で収益力強化?
都内信金合併 (上)
10月7日、日経平均が9000円を大きく割り込み、バブル崩壊後の最安値を更新しました。これは米国をはじめとした世界連鎖株安に加え、政府が経済政策の第1に掲げる「不良債権最終処理の加速化」への不安が高まっているからです。
あせる政府は8日、同友会も要望してきたペイオフ全面解禁の延期を打ち出しました。
不良債権の早期最終処理と並行して、金融機関の経営の健全化を図る一環として進められてきた金融機関の再編策は、信金・信組を巻き込み、地域金融機関のあり方を大きく変えています。都内では5年前に49あった信金が、来年には25に集約されていきます。
今年5月末、都内に本店を置く王子、太陽、荒川、日興の4信金は来年7月をメドに合併すると発表しました。
王子を存続金庫として、合併後の総預金量は2兆3000億円、貸出金は1兆6000億円の全国3番目の規模となる見通しです。大前王子信金理事長は「重複する30店舗を中心に店舗削減などのリストラを進め、収益力を強化する」と目的を説明しています。(日本経済新聞6月1日付)
信金の健全性とは
6月10日に東京同友会が開いた東京都信用金庫協会との懇談会では、「金融検査マニュアル」の問題点を指摘する形で、同協会が3月に出した「都内信用金庫経営の健全性について」答申案の説明がありました。
答申案は、「財務面から金融機関の健全性」「経営理念から見た健全性」「経営の自律」からなり、「自己資本比率を向上させていくことは(中略)避けて通れない命題」としつつも、小零細企業の融資は小口でリスク分散が図られているため、リスクウエイトを100から50%にすべきとしています。
また、信金の成り立ちから「『中小企業専門性』『協同組織性』『地域密着性』が信金の特長」で、「小口多数取引でリスク分散」し、「情報の稠密化で信用コストと回収コストを低める効果がある」としています。
苦渋の選択
再編の渦中にある日興信金理事長の小野澤幸雄氏は、本連載「どうなる金融」の前シリーズ「不良債権最終処理」の取材で、「信金は中小企業の『再生工場』」とし、「リスクを超えないと誠実ではない。地域密着であるためには『信金は預金量5000億以上になってはいけない』との意見に賛成」と話していました。
懇談会に参加した同氏に今回の信金合併について参加者から質問が出され、回答は氏が合併の決断をするにあたっては、すでに他の3信金で外堀が埋められ、苦渋の選択を強いられたことを伺わせるものでした。
融資担当者も対応に苦慮
この合併下、融資先の企業から「次の融資も大丈夫だよね」と聞かれ、返答に詰まったというのは、荒川信金の融資担当者です。「存続金庫である王子信金に企業の格付けや融資の査定をあわさざるを得なくなるので、今は確実なことはいえません」と話しています。
中同協事務局 平田美穂