教育基本法改正に思う【談話】

教育基本法改正に思う  教育についての本質的議論を
2007年1月17日
中同協社員教育委員会 担当常任幹事 本郷 利武

 2006年12月15日、教育基本法の改正案が参院本会議で賛成多数で成立しました。その一方で、日本経済新聞の世論調査によると、教育基本法の改正案については、今国会成立にこだわるべきではない、との回答が55%で最多だったのです(2006年11月28日朝刊)。

 今、教育が多くの問題を抱えているのは事実です。しかしその原因が、教育基本法が古びて時代に合わなくなったためなのか、教育基本法の精神が十分に生かされてこなかった結果によるものなのか、国会の論議は平行線をたどりました。

 教育が抱えている多くの問題の背景には、バブル崩壊後の相次ぐ経済政策の失敗による格差の拡大、それに伴う地域社会の崩壊と人心の荒廃があります。それらを放置したまま、教育基本法だけを改正しても何の解決にもならないと思います。

 教育の現場で真摯(しんし)に問題と向きあっている先生たちが全国に少なからずいるわけですから、先生たちに任せることが問題の解決につながると考えます。先生たちは、子どもたちが本来もっている生きる力を時間をかけて引き出し、子どもたちの成長を支えています。先生たちの熱意を信頼して、先生たちのネットワークを整備、充実させることが必要なのではないでしょうか。

 教育は子どもたちの幸せのためにあります。子どもたちの幸せこそ社会の未来であり、子どもたちの笑顔は人類の希望です。

 国会では、子どもの幸せを中心に置いた、教育についての本質的議論が、残念ながら、尽くされておりません。その意味で、次の時代を担う子どもたちへの責任を大きく感じます。ですから、教育についての本質的な議論が必要と考えます。

 人は、まわりから成長を促す刺激を受けて育ちます。家族からは家風という刺激を受け、学校からは校風、地域からは地域の風、時代からは時代の風、会社からは社風という刺激を受けて育ちます。一人ひとりが、人に成長を促す刺激を与えられる存在になり、お互いに切磋琢磨して育ちあう、という「風」を大切にしたいものです。

 また一人ひとりが違って生まれてきます。ともすれば、人間は違うものを排除しがちですが、それでは人間の社会は成り立ちません。一人ひとりの違いを認め、可能性を引き出し、引き出された可能性を人のために使うにはどうしたらいいかを学びあうのが教育です。

 さらに、人間は幸せになるために生まれてくるのです。幸せとは何かを考え、幸せの実現のためにはどうしたらいいかを学びあうのが教育です。

 私たちは長年にわたり、教育基本法やユネスコ学習権宣言等に学びながら、「労使見解」の精神を生かした社員教育について考え、実践してきました。これを契機に、同友会が積み重ねてきた社員教育の理念と経験に基づいて、“人間が幸せになる”ための教育をさらに追求していきたいと思う次第です。