【11.03.28】民主党・中小企業庁に、復興に向けた要望・提言を手渡す

中同協は3月28日、民主党経済産業部門会議に東日本大震災の被災状況と復興に向けた同友会の活動を紹介し、早急に取り組むべき要望・提言を提出。29日には、豊永厚志中小企業庁次長と懇談し、同要望・提言を伝えました。

以下全文を掲載いたします。

東日本大震災に関する第一次緊急要望・提言(案)

中小企業家同友会全国協議会
会  長  鋤 柄  修
〒170-0005 東京都豊島区南大塚3-39-14 大塚南ビル2F
電 話 03(5953)5721? FAX 03(5953)5720
URL http://www.doyu.jp

東日本大震災に関する第一次緊急要望・提言(案)

中 同 協 の 概 要
・中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は47都道府県にある中小企業家同友会の全国組織
・創立:1957年4月、日本中小企業家同友会(現東京中小企業家同友会)として東京で創立
・全国協議会設立:1969年11月
・会長:鋤柄 修(㈱エステム)
・会員数:4万1千名(企業経営者)
・会員企業規模:平均従業員数約30名、平均資本金1,500万円
・中小企業家同友会は経営者の自助努力による経営の安定・発展と、中小企業を取り巻く経営環境を改善することに努めています

私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努めて参りました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、史上まれにみる災禍を日本にもたらしました。日本経済へのダメージも測り知れないものがあります。いま官民が協力して復旧、復興に総力を挙げて取り組んでいますが、今回の大震災を教訓に、日本の「防災国家」化をめざし、将来に向けた大胆な投資を実施する政策を進めることが求められています。安心・安全の国土政策と再生可能エネルギー政策を大規模に実施し、中小企業も新しい仕事づくりに参加できる体制を整備することが必要です。
私たちは、中小企業家としての社会的責務を果たし、日本経済と中小企業が発展できる環境をつくるために以下のような経営環境を求め、行動するものです。
関係各位のご協力、ご支援を要望します。

1、東日本大震災からの復興を中小企業の再建と協力で進めること
 東日本大震災は史上まれにみる未曾有の災害であり、これまでの経験則が通用せず、従来の政策や法的枠組みだけでは対応できないものである。したがって、実態に即した措置を迅速、果敢にすすめるとともに、この危機を中小企業の発展を通じて草の根から打開し、日本経済の弱点を克服して抜本的な建て直しにつながるものとしていくことが望まれる。
東日本大震災に被災した東北地方の復興を大本から建て直し、日本経済の弱点克服に結びつけるための第一は、農林水産業の復興によって基盤から地域経済を立て直すこと。第二は、地域分散型エネルギーシステムづくり、太陽光発電や小水力発電など自然エネルギーの普及、推進。第三は、困難な状況に置かれている中小企業が元気になる施策を連打し、地域経済の崩壊を防ぐこと。このような取り組みは、世界的に原油など原材料価格や農産物が高騰する中で、日本経済の食料とエネルギーの自給率を改善し、リスクの軽減にも貢献することになる。
以上の認識を踏まえ、次の事項を要望・提言する。

1)被災地の中小企業の営業が再建・継続され、地域経済の崩壊・底割れを防ぐため、税と社会保険について緊急に次の特別措置を実施すること

(1)被災したすべての個人や企業に対し、社会保険料免除の特例措置を実施すること。1995年の阪神・淡路大震災では震災特例法を制定し、「社員に対する給与等の支払に著しい支障が生じていること」という条件を付けて、企業と社員の負担分の両方とも免除することができるとした。しかし、1995年当時と比べて、現在の企業及び社員の社会保険料負担は大幅に増加している。社会保険料負担のために、被災した企業が倒産したり、被災した社員が困窮することは避けなければならない。しかも、今般の震災は史上まれにみる大震災であり、被災地域全体の経済の地盤崩壊が強く危惧される。したがって、条件を付けずに、被災したすべての個人や企業に対し、社会保険料免除の特例措置を実施することが求められている。もちろん、将来の年金の支給額には影響させない措置をとる。財源は、巨額に積み上がった積立金(188兆円)の一部を取り崩すこととする。

(2)国税通則法及び災害減免法を改正し、納税猶予の条件を拡充すること。現行では、災害により全積極財産のおおむね20%以上の損失を受けた被災者は、その損失を受けた日以後1年以内に納付すべきものとしているが、「10%以上の損失を受けた被災者は、その損失を受けた日以後2年以内に納付」へ拡充すること。

(3)災害減免法を改正・機能強化し、被災地域の所得税、法人税、相続・贈与税、消費税などの大幅な減免措置を行うこと。また、納税者の選択により、2011年分の確定申告からでなく、2010年分から適用されるようにすること。また、本社が被災地域以外にある場合でも、支社や工場などが被害を受けた場合も減免措置の対象とすること。

(4)大震災の地震・津波などで損害を被った機械設備等の減価償却を前倒しで計上できるようにすること。

2) 被災地の中小企業の再生を強力に推進し、地域経済の再建に努めること

(1)大震災からの復興にあたっては、地域経済を支える中小企業の一日も早い復興が肝要である。被災した中小企業への緊急休業補償制度の確立が切望される。当面、事業継続のための最低限の措置として、家賃や設備のリース代など固定費への補助事業を検討すること。

(2)被災中小企業の企業存続のための実情に応じた緊急融資と既往債務の返済条件緩和又は「返済凍結」を実施されたい。日本政策金融公庫等の「災害復旧貸付」については、担保について「弾力的に取り扱う」としているが原則無担保とし、貸付金利も被害状況に応じ軽減すること(甚大な被害の場合は無利子)。同様に、信用保証協会の「災害復旧保証」についても、原則無担保と保証料率の軽減等を行うこと。

(3)被災地の交通手段がままならない状況にあることと緊急の融資ニーズに対応するために被災地になるべく多くの金融相談・手続き窓口を設けること。全国の信用保証協会や日本政策金融公庫、商工中金の職員を動員し、県と連携して市町単位で金融相談・手続き窓口を設置すること。また、激甚災害法に基づき市町村長等からの「罹災証明」を必要とする手続きについては、自治体の機能の消失・低下により発行困難となっている今般の大震災の事情に鑑み、金融機関や保証協会が罹災状況を確認することで代用できるようにすること。

(4)地震・津波等で事務所・工場の流焼失・崩壊などの被害を受けた中小企業に対して、とりあえず事業を再開する場所や仮設事務所の提供をすみやかに行うこと。事業所・工場の再建や代替土地等の取得を支援する特別な助成制度を創設すること。

(5)今回の大震災では携帯電話が命綱となった。企業の再建、復興においても必需品である。固定電話においては基本料金や移転費用は無料とする措置がとられたが、携帯電話においても同様の措置がとられるべきである。当面、料金の滞納が利用停止とならない措置をとるとともに、被災期間の携帯電話料金支払い猶予措置を取るよう、国から各携帯電話会社に要請すること。

(6)復興支援にあたっては、被災地の産業連関・経済循環の再建を重視し、公共事業や物品調達においても、地域の雇用維持・創出と復興需要を高める効果をもつ地元中小企業への発注を優先すること。

(7)国は震災復興ための必要な規模と回数の補正予算を組むとともに、「大震災復興交付金(仮称)」を創設し、各自治体の被災地域での実情に合った復興対策をバックアップすること。

(8)被災地の経済復興のためには地域金融機関は「インフラ」ともいえる役割が期待される。災害を受けた協同組織金融機関など地域金融機関の再建を支援し、復興において十分に機能させるために国は特別融資などを実施すること。

3)防災型・地域再生型の社会資本整備と地域分散型エネルギーシステムの推進を―大胆な財政出動で「防災グリーン・ニューディル」(仮称)政策を推進すること

 東日本大震災からの復興は単なる復旧ではない。大震災の教訓を活かし、安全・安心の防災体制を築くとともに、地域が自活できる地域分散型エネルギーシステムづくりが推進されなければならない。しかも、そこには、コミュニティの再生を含む住民の住まいと暮らしの再建を重視した「人間復興」の理念が据えられなければならない。

(1)国は、関東大震災の際に「帝都復興院」が設置され「帝都復興事業」が行われたことにならい、時限組織として「東北復興庁」(仮称)を早急に設置し、防災型・地域再生型の社会資本整備に取り組むこと。その際、被災地域において、防災と「人間復興」を重視した新しい都市復興計画を地域中小企業を含む住民参加で策定し、すみやかに取り組むこと。

(2)「新成長戦略」では、2020年までに「耐震性が不十分な住宅割合を5%に」する目標を掲げている。この目標が確実に達成され、安全・安心な住宅ストックの形成を図るため「住宅耐震化95%プラン」をただちに作成し、国民への啓蒙を進めるとともに、耐震改修助成金の大幅な増額と耐震改修予算の大幅な増大を図ること。また、耐震改修助成金支給の条件を緩和し、既存不適格建物への適用や手続き・検査の負担軽減を行うこと。さらに、税制上では、耐震改修にかかった費用の所得税からの控除の拡大や固定資産税の軽減の拡充など耐震改修促進策を強化すること。耐震改修と併せて太陽光発電、太陽熱利用など再生可能エネルギーによる省エネ改修も推進すること。

(3)今回の福島第1原子力発電所での重大事故は、電力消費地の遠隔地の大型電源から長距離で電送するシステムの脆さをさらけ出した。太陽光発電や風力発電、小水力発電など再生可能エネルギーの計画的な普及を着実に進め、できるだけ電力消費地で発電・消費する地域分散型エネルギーシステムづくりを推進すること。

2、被災地に限らず日本全域に広がる被害状況に対応した緊急措置を

 未曾有の被害をもたらした東日本大震災の影響は日本全国に急速に広がっている。大震災後に実施した緊急影響調査によれば、「被災地との取引がある」とする会員が、長野(37%)、京都(51%)、大阪(43%)、福岡(27%)と相当割合を占めており、被災地の直接的影響は看過できない。また、「貴社への影響はありますか」の問いに対して、「影響がある」と「今後影響がある」という回答を合わせると、7割から9割に上っており、日本全域に被害が広がっている。
 会員からは悲鳴に近い深刻な声が寄せられている。「旅行会社の会員は、キャンセルが相次ぎ、2日間で1500万円の仕事がなくなった」(山形)、「700台納入予定の製品が、500台キャンセルになった」(東京)、「計画停電により工場が稼働できず、納期遅れが生じている。同じ理由で部品も納品されてこない」(東京)、「受注しても、部資材の納期が不明確で契約不履行になる恐れがある」(長野)、「『自粛』ムードによるキャンセルが多発し、売り上げが前年比の50%を維持できない状態」(京都)、「原発事故により、地理感のない海外から日本の商品が危ないという誤解、うわさが広がっており、多大な影響が考えられる。すでに輸入日本食品の放射能検査が始まっている」(福岡)、など日本全国、全業種に被害がひろがっている。以上を踏まえ、次の点を緊急に要望する。

(1)深刻なガソリン不足や部品・資材の不足を解消するため、全国規模での物流の円滑化と流通経路の整備を急ぐこと。また、不当な売り惜しみ、買占め等を防止するため、「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」を適切に運用し、監視を強化すること。

(2)今般の震災関連での被災地以外の中小企業の売上急減などの間接被害に対応する金融・税制・助成支援など実施すること。2011年3月末で期限が切れる景気対応緊急保証制度に代わり、2011年4月から9月にかけてセーフティネット保証が大幅に緩和されて運用される。しかも、震災を受けて、対象業種が原則全業種に拡充された。しかし、大震災の影響は長期化すると見られ予断を許さない状況であり、この運用をあと半年、2012年3月末まで延長すること。また、責任共有制度の対象除外となる小口零細企業保証制度の上限、1250万円を2000万円に引き上げること。

(3)災害救助法適用地域以外に所在する日本のすべての地域で、事業活動が縮小した場合の雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金の柔軟な運用で雇用を守れるようにすること。

(4)中小企業の営業・操業の事情を無視した「計画停電」を見直し、定時化・短時間化など事前に営業・操業の見通し・計画が立てられる実施体制とすること。東電・東北電以外の電力会社からの融通電力を増加させる抜本策を進めること。

(5)原発事故などにより、風評被害や過剰反応の自粛ムードが広がり経済活動の委縮・縮小に拍車がかかっている。政府・自治体による正確な情報開示と適切な啓蒙を進めること。

以上