1.同友会前史をたどる―どのようにして同友会はつくられたか

戦後復興の担い手として

 1945年の敗戦後、日本経済復興の過程で、同友会の前身といわれる「全中協」(全日本中小工業協議会、のちに全日本中小企業協議会と改称)が、47年に結成されます。

 当時は、占領軍による経済の民主化政策が実施され、財閥解体、農地解放が行われ、新憲法のもとで新しい国づくりが急ピッチで進められました。一方では極端なインフレが進行、国の政策は基幹産業の優先的再建を目的とする「傾斜生産方式」におかれ、中小企業は資材も資金も不足するという状況でした。しかも、国家財政が苦しいため徴税が強化されました。

 戦後、軍事経済体制から開放され、自らの意思で自由に事業を営める立場に立った中小企業家は、その旺盛な企業家精神を発揮し、焼け跡からたくましく立ち上がりました。戦後復興の担い手としての中小企業の役割は、きわめて大きかったのです。また「中小企業は平和な社会でこそ繁栄できる」ことを実感、実証できたことも重要です。

 このような時代の大転換期でありながら、肝心の資金、資材は大企業に集中され、重税に苦しむのが当時の中小企業の実態でした。こうした状況を打破しようと「重税反対」「資金や資材を中小企業にまわせ」の切実な声はいたるところで高まり、中小企業運動が高揚するなかで誕生したのが「全中協」でした。

同友会の基本精神の萌芽が

 「全中協」の目的は、大企業に偏った経済政策を是正し、中小企業の存立と発展、社会的地位の向上を求める運動でした。また、従業員の人格の尊重、労使が協力して生産の推進と生活の向上をめざすことを提起しており、当時としては先進的といえる内容です。

 この考え方が、後の中同協の「労使見解」(中小企業における労使関係の見解・75年発表)に発展していきました。ほかにも、会運営にあたっては、民主的運営に努力すること、政治的には一党一派に偏しないことを明確にしており、現在の同友会の基本精神に引き継がれていることが理解できます。

【参考文献】
『同友会運動の歴史と理念』田山謙堂著
『中同協30年史』中同協・編著

「中小企業家しんぶん」 2002年 4月 5日号より

同友会の生い立ち