2005年度国の政策に対する中小企業家の重点要望・提言

1.新しい内需を喚起し、中小企業を活性化させる景気回復策を

  1. 従来型の公共事業から、生活基盤整備・社会福祉・環境保全・防災重視の生活整備型・自然再生型の公共投資へ抜本的に転換させること。特に、災害時の避難場所となっている学校施設などの耐震補強工事を緊急に全国一斉に実施すること。
  2. 中小企業が地域で取り組んでいる新規事業、事業転換、グループ化、ネットワーク化などのさまざまな「新しい仕事づくり」を有効な景気回復策として位置づけて、積極的に支援すること。
  3. 公共発注機関の中小建設業への発注率を大幅に高めるとともに、公共事業を地域建設業者に重点的に発注すること。大型公共工事はできるだけ工種ごとに分離し、中小建設業の施工可能なものは地域中小建設業者に発注する措置をとること。
  4. 高速道路料金別納制度の廃止は、中小運送業の経営を直撃する。現行の高速道路料金別納制度に代わる新制度の創設に当たっては、大企業など大口利用者だけに恩典を残して中小企業や中小企業組合が除外される制度でなく、中小企業も安価で容易に利用できる制度とすること。
  5. 厚生年金保険料の引き上げは、中小企業の収益をさらに圧迫するので、保険料率の引き上げには反対する。正規安定雇用の推進など雇用政策の拡充とともに、巨額の運用基金を計画的に取り崩して財源を確保するなど年金改革を進めること。
  6. 高病原性鳥インフルエンザにより打撃、影響を受ける関連中小企業に対し以下の機敏な対応をとること。(1)移動制限区域を問わず、発症した県内の生産業者と卸・小売業者等の影響について国の責任において実態調査を早急に実施すること。(2)セーフティネット保証が発動された場合、適用条件に「取引規模」の制限を設けないこと。(3)「風評被害」の拡大防止のための正しい情報の伝達、周知徹底の広報活動を行うことなど。

2.市場創造と経済再活性化を支える税制

  1. 消費税の税率引き上げは更なる景気後退をもたらすので引き上げには絶対反対する。免税水準の引き下げや簡易課税制度の縮小など中小事業者特例の縮小、及び「総額表示方式(内税)」の義務付けを撤回すること。
  2. 給与所得者の所得税・個人住民税の課税最低限引き下げに反対する。各種控除の廃止・縮小による課税最低限の引き下げは増税につながり、中小企業従業員をはじめ国民の可処分所得を減少させ、国内消費を冷やして景気を一層後退させることとなる。
  3. 外形標準課税は、1億円以下の中小企業への適用を拡大しないこと。
  4. 中小企業の事業承継については、(1)相続税の基礎控除額を大幅に引き上げること、(2)事業用資産については、事業を継承するという条件の下で事業承継猶予制度を設けて10年以上事業を継承した場合一定額を免除すること、(3)自社株に対する相続税を軽減する制度が創設されたが、今後自社株式評価には企業の利益水準をベースにした収益還元方式による評価方法を導入すること。

3.円滑な資金供給と中小企業・地域に優しい金融システムの構築を

  1. 円滑な資金需給や利用者利便などの視点から金融機関の活動を評価・公開する金融アセスメント制度、「地域と中小企業の金融環境を活性化させる法律案」(仮称)を法制化すること。当面、金融庁は新監督指針に基づき金融機関から集めた「地域貢献」等の開示情報を比較可能な一覧性のある形でわかりやすくホームページで公開すること。
  2. 参加型金融行政をより推進するため、円滑な資金供給など地域貢献で努力する金融機関の寄与の程度を評価し、その適切な情報を利用者の立場から公開するNPO等の第三者評価機関を認定し登録する制度を設けること。
  3. ペイオフ解禁は、中小企業にかかわりの深い地域金融機関の預金の流失を促進させ、中小企業への資金パイプを狭め、地域金融機関の存立を危うくする懸念がある。2005年からペイオフ完全解禁が予定されているが、預金保険法によるペイオフ発動の実効猶予措置を直ちに宣言すること。
  4. 不良債権早期処理の中小企業への影響を最小限に抑えるため、次の措置をとること。
    1. 不良債権問題への金融機関の対応では、借り手企業の経営健全化への支援、債務者区分のランクアップ支援を第一義とすること。中小企業支援のための金利減免や返済猶予をする場合、貸出債権の債務者区分の格下げをしないように、さらに条件を緩和すること。
    2. 倒産防止共済制度は、共済金の貸付の償還期間を5年から10年に延長すること。また、共済の口座を設けている当該金融機関に延滞がある場合、共済金貸付と他の貸付が強制的に相殺されている。国として差押禁止条項を設けるなど制度の機能の確保につとめること。
    3. 中小企業が倒産した場合、個人の最低限の財産保障と再起できる条件を整備するため、破産法の改正など個人保証の有限責任化を進めること。当面、小規模企業共済制度を加入資格要件(従業員20名以下等)の緩和などの拡充をはかること。
  5. 「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」改訂は融資と検査の現場の裁量を拡充するものとして評価するが、さらに中小企業に適した別途の金融検査マニュアルを作成すること。
  6. 画一的規制の弊害の著しい国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制の撤廃を日本は主導すること。日本国内では2~3年の計画で自己資本比率規制を廃止し、同時に金融検査マニュアル及び同マニュアル別冊も廃止すること。金融機関の自主的な自己査定を尊重する行政に転換すること。

4.透明で公正な市場のルールをつくり取引を適正化する公正競争の確立

  1. 公共工事の入札では、予定価格よりも大幅なダンピングで、最低制限価格を割る業者に落札しているケースが生れており、下請業者にしわ寄せされて品質や安全管理でも不安が生じている。すべて公共発注機関の入札制度の改善のため、下記の提案事項に沿って国の指導を徹底すること。
    1. 「ゾンビゼネコン」といわれる金融機関から債務免除を受け、体力を回復して建築市場で安値受注競争を引き起こしている企業に、一定のペナルティを与え、債務免除を受けてから一定期間の入札への参加を認めないよう指導すること。
    2. 予定価格から大幅にダンピングした最低制限価格を割る業者の工事については、その業者の経営、工事に関する審査を厳正に行うこと。その審査基準を公開するとともに、契約不履行や品質・安全管理、下請管理、賃金の支払状況など工事後の評価も公表するよう指導すること。
    3. 最低制限価格を堅持し、予定価格の90%程度に引き上げるよう努力すること。
  2. 世界的に原材料需給がひっ迫し、価格が高騰している。中小企業に原材料確保の困難や購入価格の上昇など重大な問題を及ぼしつつある。政府は、緊急に調達のための対応策をとること。また、売り惜しみや買い占め、便乗値上げを防ぐために原材料価格の需給動向の調査・監視を強めること。

5.「中小企業憲章」の制定、他

 日本政府は、中小企業を国民経済の豊かで健全な発展を質的に担っていく中核的存在として位置づけ、日本経済に果たす中小企業の重要な役割を正確かつ正当に評価することを通して、中小企業政策を産業政策への補完的役割から脱皮して中小企業重視へと抜本的に転換することを「宣言」し、日本独自の「中小企業憲章」を制定すること。国家行政組織法などを改正し、中小企業庁を経済産業省の外局から内閣府の外局に移して担当大臣を置くこと。

以上