オプション調査「地球環境保全と企業経営」
建設業中心に環境保全型産業への転換強める

 中同協では、環境保全活動や環境ビジネスに会員企業がどのように取り組んでいるかの調査を、3月に実施した「同友会景況調査」(DOR、四半期ごとに実施)のオプション項目として実施しました。この項目には959社が回答を寄せ、約5割の企業が「地球環境保全のため」に具体的な取り組みを行っており、2割強の企業が「環境ビジネス」を「本業」または「新分野」で取り組んでいることが分かりました。以下、概要を紹介します。

4割強が「環境保全」に積極的な取り組み

 まず、「地球環境保全」を経営指針等で明文化するなど、企業経営のなかでの位置づけでは、「経営指針等で明文化し、環境に配慮した企業づくりに積極的に取り組んでいる」が14・9%、「経営指針で明文化しているが、積極的な取り組みはしていない」が7・4%。また「明文化していないが、積極的に取り組んでいる」が26・5%あり、「明文化」を問わず「積極的に取り組んでいる」企業はあわせて41・4%でした。(図1)

図1 企業経営における「地球環境保全」の位置づけ

DOR61号特別調査図1

 業種別では、「明文化」を問わず「積極的に取り組んでいる」企業は、建設業が52・6%と5割を超え(図2)、規模別では、規模の大きい順で環境保全の位置づけの高いことが分かります(図3)。

図2 業種別「地球環境保全」の位置づけ

DOR61号特別調査図2

図3 規模別「地球環境保全」の位置付け

DOR61号特別調査図3

滋賀、福岡で同友会活動の成果反映

 一方、地域(ブロック)別では、「明文化」を問わず「積極的に取り組んでいる」とこたえた割合が高いのが「北陸・中部」(46・1%)、最も低いのが「近畿」(37・7%)。これを20社以上が回答を寄せた都道府県別でみると、滋賀が25社中16社(64%)で「積極的に取り組んでいる」とこたえており、際だっています。

 滋賀同友会は、経営指針成文化運動に力を入れるとともに、2001年に初めて中同協が開いた環境問題交流会の開催を提唱し、「同友会版環境マネジメントシステム」(同友EMS)の構築・普及に務めていることが反映されているようです。同じく、1996年の地球環境問題委員会設立以来、活動を続けている福岡同友会でも、39社中20社(51・3%)が「積極的に取り組んでいる」と回答。ここでも委員会活動の成果がうかがえます。

「環境ビジネス」化強める建設業

 「地球環境保全のための具体的取り組み」では、「ある」が51・3%で半数を超え、業種別では、建設業56・8%、製造業54・8%、流通・商業46・0%、サービス業47・4%でした。建設業は、環境ビジネスでも本業として取り組んでいる割合が他の3業種と比べて高く(25・5%)なっています(図4)。

図4 業種別「環境ビジネス」の取り組みの有無

DOR61号特別調査図4

 具体的な取り組み(記述式)では、地球環境に配慮した事業活動を行うための国際規格ISO1400を「取得した」「取得に向け検討中」を含め、62社が取り組んでいます。

 環境規制強化への対応では、運輸業等で首都圏を中心にディーゼル車からLPガス車等への転換がすすめられ、建設業では、協同組合を設立して処理場をオープンした企業(富山・総合工事業)もあります。

 建設業では環境保全への取り組みが「環境ビジネス」と一体化して進められているのも特徴です。「有機廃棄物の炭化装置の開発」(茨城・設備工事業)、「循環型住まいづくり」をテーマに掲げた企業づくり(滋賀・総合工事業)など、建設業自体が「環境」に正面から取り組む「環境ビジネス」化を強く意識していることがうかがえます。

 建設業以外では、「脱塩ビ材料の研究と採用」(群馬・化学・石油製品製造)、「無農薬野菜の作付けを増やし、農家育成」(広島・小売)、「コスト増を度外視して100%リサイクル可能なトレーを使用」(千葉・小売)、「ハウスクリーニングの洗剤をエコロジーのものに切り替え」(京都・対個人サービス)など。「本業が製造業として、環境汚染につながるものを、片っ端から徹底的に順を追って予算付が可能なものから休みなく、絶えず(取り組みを)行っている。汚染源に対してこれを根絶する努力を継続する」(広島・金属製品製造)との力強い記述もありました。

環境ビジネスで市場創造

 最後に、環境ビジネスの取り組み状況では、「本業として」(14・9%)、「新分野として進出」(6・6%)あわせて21・5%の企業が取り組んでおり、「検討中」(29・7%)も含めると、5割の企業が環境ビジネスに意欲を持っています(図5)。

図5 「環境ビジネス」の取り組み状況

DOR61号特別調査図5

 環境ビジネスの内容では、ダイオキシン規制や各種リサイクル法への対応、フロン回収、土壌浄化など、環境規制が新たなビジネスを生んでいることがわかります。また、「産業クラスター計画に参加し、新製品開発」(滋賀)、「『ワット神戸』に参加し、太陽光利用の機器開発」(兵庫)など、ネットワークによる環境ビジネスの創造も始まっています。

 官公需からの脱却を掲げる建設業では、「非常に厳しい現況にあるが、現時点では地域の雇用創出をキーワードに、環境保全型産業の種まきに奮闘中」(青森・総合工事業)など、地域に責任を持つ企業として、環境保全型産業への転換が必死の努力で続けられています。

「中小企業家しんぶん」 2003年 6月 15日号より