【建築確認遅延問題】愛知同友会が緊急アンケート実施、要望書提出へ

 
改正建築基準法で広がる混乱

 2007年6月20日に施行された改正建築基準法により、着工認可が大幅に遅れ、建設業界が大混乱に陥っています。この問題は、10月4日の中同協・政策委員会が集中的に論議し(本紙10月25日号に掲載)、各同友会が緊急アンケートやヒアリングを実施して実態の把握に努めるとともに、それをもとに行政に早急な改善や対応策を要請する行動につながっています。ここではいち早く行動を起こした愛知同友会の調査や要望書を紹介しながら問題点を考えます。

住宅投資が急減

 国土交通省によれば、新設住宅着工戸数は7月に前年対比約23%減、8月は約43%減と急速に落ち込みました。この落ち込み度合いはあまりに大きく、住宅投資が今後の景気の大きな撹乱(かくらん)要因になることは間違いありません。

 この急減の原因の第1は、改正建築基準法により建築確認審査が厳格化され、審査に時間がかかるようになったことです。確認申請された一定規模以上の建築物等について第三者機関による構造計算のダブルチェック(構造計算適合性判断)が義務付けられたほか、いったん申請した後に変更があった場合には軽微な不備を除いて再申請が必要になった等の変更がありました。申請に要する書類が大幅に増えたことも審査にかかる時間を増加させました。

 原因の第2は、行政の対応の著しい不備です。細部の法律が告示されたのは施行のわずか1カ月前であったことに加え、具体的な作業を行う上で必要不可欠な技術基準解説書が公開されたのは、法律施行の約2カ月後でした。しかも、施行と同時に提供できるはずだった構造計算ソフトの開発も遅れ、「大臣認定プログラム」は現在に至るも販売されていません。

 要は、具体的な審査基準が曖昧(あいまい)なまま法律だけが「見切り発車」したために、申請する側も審査を行う側も身動きがとれなくなり、確認業務が停止に近い状態に陥ってしまったわけです。

弾力運用指示する通知も出されたが

 9月25日付で国土交通省は、「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律等の円滑な運用について(技術的助言)」という通知を出し、「改正法の趣旨を踏まえ、建築主等に無用の負担を強いることのないよう適切な運用を図られたい」など弾力的な運用を指示しました。一部には、この通知がだされて以降、審査がスムーズに進むようになってきたという声も寄せられていますが、大幅な遅延が解消されるのか否かは現時点では不透明です。

建設業で6割、それ以外でも2割強が影響

 この事態を受けて愛知同友会は、まず緊急アンケートを実施しました(回答、556社)。その結果、建築基準法改正によって、建設業で5社に3社(61%)、建設業以外でも4社に1社(23%)が影響を受けており、問題の大きさが浮き彫りになりました(下図参照)。

 記述回答では、「改正の影響で工事の受注ができない。受注できても確認の審査が下りない」「このままでは、建設業は存亡の危機にある」という深刻な声が寄せられています。

 また、「建設業界は景気のバロメーターであり、不動産、金融、資材、物流、素材、雇用など、ほとんどの業界で連鎖効果があり、(今回の改正が)経済全体に悪影響を与えている」という経済失速の懸念も広がっています。

 事実、建設業以外の会員からも、「来年6月末に工場新築移転を計画しており、造成認可は下りたが建設確認が下りず、工期が延びないか危惧(きぐ)している。自動車関連の製造業にとって、生産は待った無しである」、「製造業ですが、建築材料(モルタル)の製造を行っております。7月から9月の売上が前年比50%、例年比70%ぐらいで大変落ち込んでおります。建築材料関係の客先や他メーカーも同様の状態であると聞いております」など、悪影響が波及している様子がうかがえます。

要望書を理事会で決議、行政に要請(愛知)

 この深刻な事態を打開するため、愛知同友会は10月17日の理事会で建築基準法改正について次の項目の要望を決議し、行政に要請することにしています。

1.今回の法改正における影響を地域ごと、関連業界ごとに広く、実態調査を行うこと。また、いつ混乱が収束するか、見通しを公表すること。

2.建築基準法に関連して、以下を行うこと。
  (1)確認申請の審査期限を厳守、(2)上記ができない場合、当面、ピアチェック(第三者機関による構造計算適合性判定)の延期、(3)ピアチェックの対象物件を減らすこと、(4)既存床面積の2分の1以上の増築を可能にすること、(5)確認申請手数料の二重取りをしないこと、(6)現場の工事工程を尊重した変更申請業務にすること。
3.運転資金(つなぎ融資)に関して、行政として早急に対応すること。
4.関係部局の人員を増やし、特別体制で処理にあたること。
5.行政において特別窓口を設け、適切な対応を至急行うこと。

*要望書全文は、愛知同友会ホームページ
http://www.aichi.doyu.jp/

「中小企業家しんぶん」 2007年 11月 5日号から