改正建築基準法の影響調査より~建設業以外にも広がる影響

 改正建築基準法の影響で建設業界を中心に大混乱が起きている問題で、中同協は11月7日、国土交通省、中小企業庁に要望・提言を行いました(本紙11月15日号既報)。今回は、愛知(回答554社)、京都(同130社)、広島(同269社)の3同友会が行った会員企業への調査より、具体的な影響を紹介します。

 愛知同友会が9月から10月にかけて行った調査では、「影響あり」が、建設業で61%、建設業以外でも23%ありました。10月中旬に行った広島の調査でも、建築関連で56%、それ以外で25%が「影響あり」と回答。京都では建設関連企業を中心に調査を行い、建設業で72%、それ以外で35%が「影響あり」としています。

着工遅れ、資金繰り、職人確保など深刻

 これを記述回答で見ると、建設業では、「受注工事の着工遅れ」「着工遅れによる資金繰りへの影響」「申請書類の増加と認可の遅延」のほか、職人の手配や顧客の信用、融資凍結のおそれなど、切実な回答が多く寄せられています。

 「次の仕事の予定がつかず、下請けの手配ができない。資金繰りの予想がつかず、過剰に借り入れが必要となった」「いつ完成するとの返答ができないため、(発注者の)事業主も事業計画が立てられず、計画中止になる物件が出てきている」「工事着手の予定を明言できず、顧客の信用を失う。期日までに工事未着手となれば、融資も凍結され、工事そのものがなくなってしまう」。また「確認申請が不要な工事やリフォームなどの受注競争が激化」「不動産の流通量が減少」という状況もあります。

他業種にも連鎖

 建設業以外でも、「部品製造で新工場建設を予定しているが、移転計画が遅れ、増産対応が困難な状況」「社員寮新築の予定が大幅に遅れ、来年4月の新卒社員を受け入れられない」「事務所建築を計画していた顧客が建築許可が下りずに建設できない影響で、OA機器や事務用品などの納入計画が狂い、売上できない」「建材メーカー向けの梱包材の出荷が大きく落ち込んでいる」「出店計画のめどがつかない」など、影響は多岐にわたっています。

 今後、「原油の高騰など仕入れ価格が上昇し、当初の見積もりでは対応が不可能に。工事物件が少ないことから、業者間競争が激化し、根拠のない価格が横行、価格の下落が起きてくる」「計画物件の着工が年明けから一斉に始まり、職人の確保が困難になる」など、競争激化と職人確保への危惧が広がっています。

 さらに、「当社は独自のパネルを開発し認可をとり進めてきたが、これも使えなくなってしまった。差別化できる部分もなくなり、大手メーカーに飲まれてしまうのかと不安」「建設不況が連鎖的に他業種にも及び、国中が不景気になることは容易に想像できる」との意見も寄せられています。

行政に望むこと

 行政に望むことでは、「もともとがずさんな建築確認行政から端を発したこと。今では重箱の隅をつつくような瑣末(さまつ)な事柄まで管理しようとして、揺れ方が激しすぎる。書類上のチェックも必要だが、工事の進捗(しんちょく)状況に応じた現場検査が最も重要」「ただ単に、行政が責任逃れするためにできた法律にしか思えない」などの厳しい意見や、「まじめにお客のために家づくりをしている業者の否定を感じる。何百年も続いてきた地域にあった家づくりをとりあげてほしい」など、地域に根ざす中小建設業の存続の危機まで感じられます。

 11月27日、セーフティネット保証(5号)の対象業種に建設関連15業種が追加指定され、中同協の要望・提言が一部実現しました。今後、中同協は国会要請等を検討しています。

「中小企業家しんぶん」 2007年 12月 5日号から