営業する自動車整備工場に転換 新和自動車工業(株) 社長 尾又 英敏氏(茨城)

4年半で99%下請けから85%直請けへ

下請け体質からの脱却

車体のゆがみを測定する機械を前にした尾又氏

 20年前、茨城県内に800社あった自動車整備工場が、今では300社。さらにこれから5年間で、県内の自動車整備工場は半減するといわれています。全国的にカーディーラーが内製化し、車体整備の仕事を外に出さなくなったことが大きな要因です。

 そんな中、新和自動車工業(株)社長の尾又英敏氏(茨城同友会会員)は、2004年の社長就任後、仕事量が急激に減っていくことに専務時代から危機感を感じていたこともあって、下請け体質から脱却することを決意。新市場を開拓し、ユーザーから直に仕事を受けられるよう、フロント営業部を05年に新設しました。

 当初4名だった営業部もいまでは8名。会社を訪問すると、在籍している営業部社員全員が立ち上がって、心からの笑顔で迎えてくれました。

営業戦略の4本柱

 営業戦略として、保険代理店、保険会社、ディーラー、一般ユーザーを4本柱に、まず保険代理店との提携から営業をスタートさせました。

 社長就任後1年目の05年には前年比140%の売上増、06年には損保会社6社の指定工場となり、さらに前年比138%増となりました。また、昨年は、車体整備の全国組織に加入し、同業者のネットワークを組むなどして、さらに前年比118%増と急激に業績を伸ばしていきました。

 昨年は、一般ユーザーを対象としたカーショップを立ち上げ、将来の柱となることを期待しています。

 社員数も急激に増え、04年に15名だった社員数が、いまでは42名。5名の部長のうち、経理部長と統括部長の2名が女性で、子どもを育てながら働く女性社員も数名いて、真剣に仕事に向き合っています。

事業転換期に同友会で学ぶ

 同友会には05年に入会し、新たな事業転換期に多くの示唆を得たといいます。そして創業から19期を迎えた昨年、「会社に柱がほしい」と思い、尾又氏は社員にすすめられて、同友会の経営指針セミナーに参加し、経営指針を作成しました。

 「経営理念に該当するような思いは自分自身の中にありましたが、成文化していなかった。最初から社員と一緒につくろうと、社員それぞれの会社のイメージを図に描くなどして、経営理念をまとめるところから取り組みました」と尾又氏。

 そうやって完成した経営理念は、「あたたかい心を持って、パートナーシップを築いていきます」。尾又氏の人柄と社員の思いがあふれています。

社員教育に力を注ぐ

新たな事業分野を切り開いてきたフロント営業部の皆さん

「修理工にでもなろうか、というような気持ちで入社する社員も多く、お客様が来てもあいさつができない。そのような社員を社長は悪くいい、社員も社長の悪口を言うというひどい会社でした」。社長が方向性を示し、社員が行動し、お互いを認めあうことからの出発となり、社員と話しあうこと、理解しあうことを丹念に繰り返しました。

 また、気持ちのこもったあいさつでお客様を迎えることを心がけようと、フロントをはじめ全社員を対象に社員教育を行いました。

 新卒者の採用への取り組みは、毎年採用していくことで、教育体制や社内整備がされていきました。

 全員で毎月1回行う全体会議、月2回の経営幹部による経営推進会議、工場の責任者、フロントの責任者によるフロンティア会議、営業部によるフロント会議などで社内の認識をすり合わせ、計画を見直しています。

車のことなら何でも

 現在では、お客様の車が入庫した時に納車日を決めるよう、体質も変わり、50~60台の仕事が常にプールされているといいます。

 また来年には、地球環境に配慮し、有機溶剤を使わない水性塗料での塗装に特化し、車体のゆがみを3次元で測定する機器を導入するなどした整備工場の出店を予定しています。メンテナンス、レンタルリース、リサイクルパーツ、保険と、「車のことなら何でもできる」会社となってきました。

 「だめな社長だから、社員が頑張ってくれるんです。部長は私にはっきり意見を言ってくれるような人」と尾又氏。経営理念を自ら実践し、徹底的に社員を信頼し、成長を見守る尾又氏の笑顔が印象的でした。

会社概要

設立 1961年
資本金 1000万円
年商 3億500万円
社員数 42名(内パート2名)
業種 自動車車体業ほか
所在地 水戸市河和田町
TEL 029-251-1056

「中小企業家しんぶん」 2008年 9月 5日号より