金融サミットの歴史的意義を考える

21世紀の国際金融秩序が問われている

 年の瀬に「10大ニュース」などとして1年を振り返りますが、今年の経済に関しては「1大ニュース」だけと言えるほど、大激動の世界金融危機・グローバル不況が始まった歴史に残る年となりました。

 サブプライム問題に端を発した国際金融市場の混乱は、米国の投資銀行を中心に行われてきた、少ない資本にもかかわらず負債と信用リスクを積み上げることで、莫大な利益を上げる金融ビジネスモデルの崩壊につながり、深刻な金融危機を生み出しました。

 米国発の世界的な金融危機に対処するため金融サミット、G20会議(20カ国・地域首脳会議)が開かれ、11月15日に首脳宣言を採択しました。金融サミットの主な内容は、(1)証券化バブルの再発防止のための規制強化、(2)各国の大規模な財政出動などマクロ経済対策の表明、(3)IMF(国際通貨基金)などの強化、などです。

 この金融サミットに関しては、欧州から出されていた「ブレトンウッズ体制に替わる仕組み」の提起が米国によってIMFの強化等にすり替えられたなどの議論もありますが、歴史に残る会合となりました。

 金融サミットの意義は第1に、金融分野の規制と監督を強化することを明確にしたことです。規制されていない機関・商品・市場に対する監督強化、格付会社による国際的な規範の遵守(じゅんしゅ)などが盛り込まれ、金融規制に対する米国の消極姿勢は孤立する形となりました。

 第2に、新興国の参加がなければ危機打開の道がないことを印象づけたことです。日米欧から中国、インド、ロシア、ブラジルなど参加国の経済規模は世界の9割を占め、これだけの国のトップが経済を議論するために集まったのは初めてです。G20は、主要国首脳会議(G8サミット)と並ぶ重要性を帯びるようになりました。むしろ、もはやG8だけでは世界を仕切れなくなっているという歴史的段階にある、と考えた方がよいのでしょう。

 第3の意義は、世界的な金融危機を契機として、21世紀の新たな国際金融秩序の形成を模索する過程に入ったことです。実効性のある具体策は、来年4月までに開く次回会議に先送りされましたが、金融改革を進める歴史的スタートを切ったと考えられます。

 今年7月の中同協総会採択文の第2章では、「世界経済は収縮傾向を強め、転換点を迎えつつあります。…市場万能主義に基づく債権の証券化が世界的な信用不安を招いています」と指摘し、「今、投機マネーの規制を国際的な課題としなければなりません」と強調しました。この見通しが正しかったことが、今回のサミットからも裏付けられました。

 今、世界同時不況の中で市場万能主義・規制緩和路線に深刻な反省が起きています。金融危機の震源地である米国のオバマ新政権が次回のG20会議までにどのような政策と行動を起こすか、が注目されます。

 2009年は世界大恐慌のあった1929年から80年目の年。緊張とともに年明けを迎えそうです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2008年 12月 15日号より