酪農の里、別海町で条例制定

中小企業振興基本条例で会員拡大

南しれとこ支部別海地区会発会式風景

 北海道東部の別海町でこのほど、中小企業振興基本条例が制定され、4月から施行されることになりました。2007年11月に発会した「南しれとこ支部別海地区会」(寺井範男会長)と商工会が連携した粘り強い条例制定運動が奏功しました。北海道では帯広市と札幌市が施行されていますが、別海町で立法化されると、新たな条例づくりでは町村では全国でも初の施行になります。別海地区会は条令制定運動を梃子(てこ)に会員拡大を進め、52名の経営者が入会して企業組織率は20%を超えました。

牧草の収穫

 別海町は、12万頭の牛が広大な牧場に放たれ、生乳が46万トン生産される日本一の大型酪農地帯です。

 面積は四国の香川県とほぼ同じですが、人口は1万6000人と人より牛の数が多い最果ての町です。摩周湖の伏流水を集めた清流が草原を走り、バイカモが淡い花弁を水面に揺らします。秋にはベーリング海で脂肪をたっぷり蓄えた鮭が背びれを突き上げながら浜に押し寄せます。

 別海は酪農と漁業の町です。

 地区会発会式の来賓としてあいさつに立った水沼町長は、「同友会の条例制定運動に共感する。条例を制定して町の経済政策の中軸に中小企業振興策を据えたい」と語りました。

同友会と商工会さらに町も連携

発会を喜ぶ地元の小学生バンド

 発会式での町長の発言が追い風になり、同友会と商工会が一緒になって集中的に勉強会を重ね、昨年の4月からは町の産業振興部も加わり条例の原案づくりを進めました。

 運動の中心を担った寺井範男会長は、「発会式の時に、雇用している社員の人生に責任を持つ企業づくり目指そう、私たちを育ててくれた故郷の発展のために同友会を通して恩返しをしようと提案した。条例制定運動はその方針に合致する。制定運動を進める同友会の理想が地元の中小企業家から支持され、会員数も52社まで増えたのだと思う。同友会に入会して条例を制定しよう、地域を守ろうと入会を呼びかけた」と語っています。

 条例は18項目で構成され、首長が選挙で替わっても中小企業政策の連続性を担保することが明記されるなど、別海町の経済政策は中小企業を支援する方向に大きく転換することになりました。

条例制定運動に弾み

牧場にはタンチョウも訪れる

 1999年に国の中小企業基本法が変わり、地方公共団体は独自の中小企業振興策を策定して実施する責務を負うことになりました。

 新たな条例づくりとしては、町村では初めて制定に漕(こ)ぎ着けた別海地区会の動きは、全国の町村レベルの条例制定運動に弾みをつけることになると期待が高まっています。

「中小企業家しんぶん」 2009年 3月 15日号より