不況に負けない強い体質の企業づくりへ

「企業変革支援プログラム ステップ1」で企業の定期健康診断を

 「不況に負けない強い体質の企業にしたい」「社員との意思疎通を図っているつもりだが、思いが伝わらない」「経営戦略が弱く、実践が進まない」。どんな時代にも、経営者にとって経営上の悩みは尽きません。「企業変革支援プログラム ステップ1」(中同協発行)は、同友会の「3つの目的」や「中小企業における労使関係の見解」「21世紀型中小企業づくり」のエッセンスを抜き出し、それらを企業変革のために必要な要素として整理分類し、企業の成長発展を図るものさしとして使えるよう、まとめ上げられたものです。

 「ステップ1」の概要を紹介します。

企業変革支援プログラムとは何か

 同友会が長年培ってきた企業づくりにかかわる見解(同友会の「3つの目的」「労使見解(中小企業における労使関係の見解)」「21世紀型中小企業づくり」など)に基づいた、経営指針づくりや社員教育、共同求人などのさまざまな活動や会員の経営実践などの教訓をまとめたものです。

 セルフ・アセスメント(自己診断)という形式で、自社の経営課題を自ら明らかにすることを大事にしています。

 ますます経営環境は厳しくなってきています。こういう時代にこそ自社と経営者の変革が必要です。変革にまず必要なことは「気づき」です。

 自社がどのような状態なのか、現在の立ち位置はどこなのかを確認すること(セルフ・アセスメント)がまず必要です。この企業変革支援プログラムを自社の、同友会活動の変革の一助としてぜひお使いください。「気づき」は必ず実践に生きてきます。

入門編「ステップ1」と本編「ステップ2」

 企業変革支援プログラムは入門編である「ステップ1」と、本編となる「ステップ2」から構成されています。以下にその概要を紹介します。

ステップ1とは

 まず、設問の22項目に関してセルフ・アセスメント(自己診断)をしてもらいます。

 この診断は、決して企業を評価・査定するものではありません。経営者が自社分析をすることで自社がどのレベル(成熟度)にあるのか、今後の課題はどこにあるのかを確認するためのものです。

 現状の自社の成長・成熟のレベルの確認と、将来目指す自社の具体的姿を探るための診断とご理解ください。

ステップ2とは

 本編「ステップ2」は入門編「ステップ1」で明確になった経営課題克服のためのガイド(傾向と対策)となるようなもので、総合的に経営分析できる内容となっています。

 ステップ1のカテゴリーをもとに、財務諸表などの定量の部分も含め、ステップ2のカテゴリーは構成されています。

 経営指針成文化後の実践の検証など、経営課題克服のために取り組んでいこうとする経営者を対象としていますので、成熟度診断のレベルによって使い分けるものではありません。

 「ステップ2」は現在開発中で、2009年度中の試験運用バージョン完成に向けて、中同協経営労働委員会「企業変革支援プログラム検討プロジェクト」で開発を進めています。

「ステップ1」に取り組む意味

 では、「ステップ1」に取り組む意味はどのようなところにあるのでしょうか。企業と同友会について、ポイントをまとめてみました。

企業にとって
・自社評価のための物差しになります。
・企業変革の最初の段階に使えます。
・「よい会社」「よい経営者」についてのガイドラインを示すものとして使えます。
・自社の現在の状態がわかり、立ち位置の確認ができます。
・自社評価を毎年行うことによって経年変化を確かめられます。
・自社の大枠をつかむことで、問題意識を持つことの助けになります。

同友会にとって
・例会をはじめ活動のテーマの提供ができます。
・定性的データの集約を行い、政策立案の一助となります。
・会員が自社分析をすることで、同友会で何を学べばよいか、方向性が理解できます。
・会員同士の企業訪問の際に新たな気づきを提供することができます。
・同友会のめざす企業像の一端を外部に知らせることができます。

「ステップ1」をどのように使うか

 「ステップ1」の運用は、図(3)にあるように、(1)企業の自己診断→(2)診断結果の分析→(3)経営課題の抽出→(4)経営指針への反映→(5)実践し変革する(実践における同友会としての変革支援)→(6)変革状況の総括→(1)へのサイクルを回していくことをイメージしてつくられています。

 以下に具体的に経営者として同友会としてどう使うかを紹介します。(実践事例は別掲)

経営者として

(1)まず経営者本人が行ってみる
・自社の強み・弱みを知ることができる。
・自社の次のステップを具体的なイメージで知ることができる。

(2)一定の時間に社内の複数のメンバーで自己評価を行ってみる
・社内変革の課題が社員同士で明確になる。
・経営者と社員の認識の差が具体的になる。
・社員間にも認識の差が相当あることがわかってくる。
・社員間の認識のズレを次のステップを確認しあうことで修正できる。

同友会として

(1)いろいろな活動で使う
・同友会の課題・テーマが明確になる。
・会員間で企業経営の共通の尺度がもてるので、自社の経営課題がより明確になり、対話を通してより具体的な気づきを得ることができる。

(2)同友会で何を学ぶかが分かる
・新会員に回答してもらうことで、同友会で何を学べばよいのかを明確に伝えることができる。

(3)回答データの蓄積を
・全国の会員が行い、同友会として情報を蓄積することで、会員の経営実態がよりリアルに把握でき、その地域や業界の経営課題となっている部分について経営環境改善のため政策活動にも活用することができる。

「ステップ1」の設問とそれへの回答

 「ステップ1」では5つのカテゴリーにそれぞれ4~5項目の小項目があり、計22項目についての質問に答えていくようになっています。

 それぞれの項目には「認識されていない」から「最適化されている」までの6段階の成熟度レベルが設定されていますので、回答者は該当する番号(0~5)を選びます。

 この成熟度レベルは、現在の到達点を表すもので、自社の課題を克服し、次の段階へ進むためのヒントとなるものです。

 現状を明らかにすることで、問題点が浮き彫りになり、次への経営課題が見え、どのようにすればそれらの課題が克服できるのか、その道筋を示すものでもあります。

成熟度レベルとは

 上表は、0~5までの成熟度レベルの考え方と、設問と労使見解等との整合性がどのようにとられているかの相関を表しています。

・「0」は、課題や必要性を認識していない状態。
・「1」は、課題や必要性を認識しているが、場当たり的に行われている状態。
・「2」は、繰り返し行われてはいるが、課題解決の手順や仕組みが不十分で、個別的、部分的に実施にとどまっている状態。
・「3」は、課題解決の手順が確立され、実践されている状態。
・「4」は、課題解決の手順が確立され、実践され、見直され、さらに実践されている状態。
・「5」は、継続した改善により最適な状態となっており、外部から高く評価されている状態。

 経営指針を作成しただけで本格的な実践はこれからという状態は、それぞれの項目がほぼ「1」ということになります。

同友会としての実践事例

 各同友会では、「ステップ1」を使い、さまざまな取り組みが始まっています。愛知、京都、愛媛の同友会の取り組みを紹介します。

【愛知】愛知同友会では、「ステップ1」を使い、4月21日の総会で分科会を行います。
▼テーマ「自社発展の確かなステップを発見しよう~『企業変革支援プログラム』で経営課題を浮き彫りに」▼パネリスト・加藤明彦氏/エイベックス(株)(活動部門担当副代表理事)、徳升忍氏(株)ドライバーサービス(三河支部長)▼コーディネーター・青木 義彦氏/(株)サンテック (経営労働委員長)
 「自社・自己変革の確実なステップを共に踏み出しましょう」「発見された課題を材料に例会など様々な活動にも活用を」と呼びかけています。

【京都】京都同友会では、昨年10月の理事会で、プログラムの位置づけについて以下のように確認し、新年度の方針にも反映しています。
 (1)3つの目的の総合実践である経営指針成文化運動の補完ツール。(2)「よい会社」と「すぐれた経営者」の具体的イメージ。(3)全国、京都の定性的データを蓄積、分析し、企業変革と同友会運動の政策に役立てる。(4)同友会運動の発展に寄与。(5)「京都同友会2010年ビジョン」の実践の一環であり、学び実践する経営者を増やし、黒字体質の企業づくりに貢献する。

【愛媛】愛媛同友会では4月23日の総会で、このプログラムにそって問題提起が行われるほか、5つのカテゴリー別にグループ討論を組む予定です。
 また、08年度から経営者や幹部社員対象の「同友会大学」の講座を、ステップ1のカテゴリー別に組み、「こんなことが学べるなら」と参加者が増えたとのことです。

「中小企業家しんぶん」 2009年 4月 5日号より