長期戦覚悟で新分野へ踏み込むとき

嵐を乗り越えてこそ実力がつく―景況調査結果より

 2009年1~3月期の同友会景況調査(DOR(ドール))結果は、衝撃的な数字が並びました。

 業況判断DI(「好転」マイナス「悪化」企業割合、前年同期比)が08年10~12月期のマイナス49からマイナス59にまで後退しました。製造業に至ってはマイナス67。8割近い製造業が「悪化」とこたえています。

 生命線である採算水準DI(「黒字」マイナス「赤字」企業割合)は、23ポイント悪化して、マイナス24に降下しました。いずれもバブル崩壊不況を超える調査開始以来の悪さです。

 日銀短観3月調査でも、過去最悪のレベルまで悪化しました。業況判断DIでは、大企業製造業がマイナス58と前回比34ポイント悪化。業種別にみると、鉄鋼(77ポイント減)、自動車(51ポイント減)、一般機械(42ポイント減)が目立ち、自動車不況の打撃が裾野を広げていることがうかがわれます。

 大企業非製造業でも、変化幅で運輸(39ポイント減)、卸売(37ポイント減)、リース(31ポイント減)の悪化が目立ち、製造業の調整圧力が、荷動き鈍化、貿易低迷、設備投資抑制として、非製造業にも浸透してきています。

 注目される設備投資計画では、大企業製造業が2009年度の上期前年比マイナス9・8%、下期前年比マイナス16・4%と削減ペースを緩める気配はありません。年度中の設備投資が極めて抑制的であることで、中小企業への打撃も長引くことが予見されます。

 DORの記述回答「経営上の努力」では、「とにかくガマンの一言」とか、「最悪!」「限界」など悲壮感に満ちた声がある一方、事態に冷静に対応して、新しい需要・仕事を作り出そうという記述も目立ちました。

 「トヨタショックの直撃を受け、本体、部品関連、その他30~60%ぐらいになる。……冷静に受け止め長期戦に備え、体制を再構築するべく動いている。……今後、今まで培った体力をベースに、新分野での営業を強化し、少しでも上がれば利益の出る体質を作りたい」(三重、段ボール製品製造)。

 「『安心・安全』『省エネ』『環境』『情報』など、伸びる分野はまだあると考えます。最終エンドユーザーまで届く提案が大事だと思い、得意先(工事店など)と共に需要開発を行います」(兵庫、電気設備資材卸)。

 「『価格決定権を我社で』の新規事業に向けて、社員2人が猛勉強中。ビジネスとして実るのは2年後になりそうですが、派生効果が確実に出て、営業上同業他社との差別化になりつつあります」(岡山、オフセット印刷)。

 「このような時期を乗り越えてこそ、会社の実力がついていくのだと思う。……軸足をぶらさない新規事業開拓、無理な投資をせずに、少しずつ新規顧客を開拓していくこと。本業の徹底した見直しを図ること。……そこからのヒントがあるはず」(福岡、管工事業)。

 企業も同友会も試されるとき。会員企業はたくましく新分野に挑戦しています。

 詳しくは、4月末に中同協から発行される『DOR第86号』を参照ください。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2009年 4月 15日号より