地域の危機に黙ってはいられない~逆境を糧に大きなうねりへ【岩手・気仙支部】

 「このままでは地域がなくなる」との危機感から、地域に新しい仕事と雇用をつくり出そうと、地域あげての大きなうねりを巻き起こし、組織率20%をめざす岩手同友会気仙支部を紹介します。

 岩手同友会気仙支部は、会員28名での設立から2年という短期間の中で、78名まで会勢を伸ばしました。

 少子化が進み、町から若者が進学や仕事を探し都会に出ていく。「このままでは地域がなくなる」との危機感から、企業、市民、行政、大学など地域挙げてのうねりに発展したこの2年間の取り組みに注目します。

後継者の熱き思いが気仙支部設立へ

 きっかけは、1人の後継者の地域への熱き思いでした。宮城同友会の「経営指針を創る会」に参加した陸前高田市の(株)八木澤商店専務・河野通洋氏(35歳)は、岩手同友会の創立メンバーの、同じく陸前高田市の(株)高田自動車学校社長・田村滿氏(62歳)に、「世代を越えて本音で語り合う拠り所がどうしてもほしい。地域の危機に黙っているわけにはいかない」と相談します。

 若い思いに心揺さぶられた田村氏は、地域のキーマンに呼びかけ、3カ月で28名の入会を得て気仙支部が立ち上がりました。

「新しい仕事と雇用をつくる」地域連携

 気仙地域は、三陸沿岸の南に位置する大船渡市(人口4万2000人)、陸前高田市(人口2万5000人)、住田町(人口6500人)の2市1町が主たる地域で、漁業農林業中心の第1次産業とそれに伴う加工業が主な産業となっています。

 毎月の例会のテーマはいつも「地域で新しい仕事と雇用をつくる」を掲げ、そこには役所の職員や商工会議所、ジョブカフェ、高校教師などさまざまな機関の壁を越えて集います。

 地域の0歳から100歳までの人口動態を示し、「地域に仕事を無数に作らないと若者が定着しない。どうする」と本気で語り合っています。

若手経営者とベテラン経営者が一緒に

 気仙支部の特長は、20代の若手経営者から60代のベテラン経営者まで、いつも一緒に語らう姿があることです。若手はシャッター通りの商店街を1軒1軒まわり、例会のチラシをどんな小さな店舗にも配ります。

 昨年12月には北海道から(株)植松電機専務の植松努氏を迎え、特別講演会を開催。70名の高校生をはじめ、市民570名が一堂に会しました。「地域を変えるのは皆さんです!」と若手が地域を走り回り、市民一人ひとりに呼びかけました。そんな粘り腰をじっと見守るのは、父親の年齢のような経営者。差し迫った危機感の中に、笑顔とゆとりが漂います。

 今年4月には北海道同友会帯広支部を訪問、地域一帯となった中小企業振興基本条例への取り組みを体感し、5月の気仙支部総会では曽根一帯広支部長、松山豊前帯広市商工観光部長を迎えるなど、今後の条例制定へ向けての展望も掲げています。

 「目指すは組織率20%。岩手を牽引するのは俺たち」と、逆境を糧に、気仙支部は将来への確かな歩みを一歩ずつ進めています。

「中小企業家しんぶん」 2009年 7月 5日号より