中小企業憲章草案で対話の輪を広げよう

右手に憲章草案、左手に経営指針

 中同協・中小企業憲章制定運動推進本部は、「中小企業憲章草案(第1次案・会内討議資料)」を発表しました(本紙6月15日付)。今後、「会内討議資料」とあるように、今月の中同協第41回定時総会から憲章草案を1年かけて会内で大いに討議・検討していきます。

 討議の主体は当然会員が中心になりますが、中小企業憲章は最終的には国民的合意をめざすという意味からは、徐々に会外の経営者や団体などに議論の場を広げていくことが必要です。特に、もっとも身近な「国民」である社員と学習・討議することも重要な取り組みです。

 ある会員が社内ミーティングで、この憲章草案を読み上げ、レポートを書いてもらったところ、ある女性社員の方が次の文章を寄せたそうです。

 「前文についてですが、数年前、大企業に勤める知人が、いろいろ待遇面について不満を言っていたので、日本企業の99%以上が中小企業で…という話をしました。すると『それは知らない。自分はがんばって、いい所に入ったんだから一緒にされては困る』という主旨のことを言いました。私は悔しいというか、悲しいというか、反論するのもやめてしまいました。この考え方が一般的なら、『日本の経済・社会・文化及び国民生活における中小企業の役割を高く評価』する。まずはこの事が皆に認知されないといけないと感じました」。

 この会員の方からは、「こんな具体的な話を書いてくれたことに感銘を受けましたのでご紹介します」というコメントをいただきました。この女性社員が、大企業に勤める知人の言動に屈辱感を持つのでなく、憲章草案の中小企業の役割に確信を持ち、人間的に成長している姿に感銘されたのだと推察します。

 就職活動などを通じて企業に対する認識が形づくられる大学生は、憲章草案にどのような反応をするのでしょうか。近畿大学で中小企業論講座を中同協の松井事務局長が担当していますが、授業で憲章草案を取り上げ、学生の提出したレポート(103件)を読む機会があり、憲章草案を前向きに受け止めている意見が多いのに正直、驚きました。

 「この文に書いてあるように今の世の中が変わっていけたら、雇用も、環境問題も外国との関係等までがうまくいくように思えた。実際にどうなるかは私たち次第だと思う」「前文はポジティブで非常に力強い文章だと思った。中小企業の存在の重要性をストレートにのべていて良いと思う。なぜかわからないが安心する文章だった」など上々の反応も。

 もちろん、「キレイごとばかりならべて」「本当にこのような中小企業になるのかと思いました」など厳しい意見も散見されます。しかし、予想以上に憲章草案を使って対話ができそうな手ごたえを感じます。

 このように、身近な社員や大学生などとともに、憲章草案を素材に地域経済や日本の将来、中小企業のあり方を語り合うことは、憲章への理解を広げる取り組みであるとともに、高い次元から中小企業で働く意義を認識する機会となるのではないでしょうか。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2009年 7月 15日号より