環境経営とCO2削減で企業革新・地域連携を推進-「同友エコ」各同友会の取り組み

 地球温暖化対策に向けて、あらゆる政策の総動員が求められるとして、「地球温暖化基本法案」が国会に上程されました。中同協では昨年7月の全国総会で、環境経営とCO2削減に取り組む「同友エコ」をキックオフし、全国の会員に参加を呼びかけています。5月10日には初めての応募締切日を迎えます。今回は、岩手、大阪、福岡の取り組みを紹介します。

「環境」を架け橋に地域再生へ~「同友エコ」キックオフから大学と中小企業家が連携【岩手】

 岩手同友会では、地元大学と連携を組み、中小企業のグリーン化、持続可能な地域づくりを学生が支援する、産学官民一体の環境マネジメント実習プログラム開発に携わってきました。

 昨年4月からINS(岩手ネットワークシステム)の環境人材育成研究会での議論をもとに、岩手大学や県立大学、行政機関と一体となって環境省の人材開発事業として進めてきました。

 この間、8月の「同友エコ岩手キックオフ・シンポジウム」開催を皮切りに、平沼・中同協地球環境委員長を迎えての経営研究集会分科会、岩手大学と共催で行った環境フォーラムにも学生が多数参加、グループ討論にも一緒に加わることで、経営者の経営と地域への思いと学生の学ぶ意欲を互いに知りあう機会を積み上げてきました。経営者と出会う機会がほとんどない学生にとっては、「経営者と同席できるだけでうれしい」「社長って熱い」という感想が寄せられました。

 環境省のデータでは、中小企業で環境報告書を作成している割合が5割を越えているとの報告があり、岩手の実態を知るため、岩手大学と共同で同友会会員企業を対象に環境意識調査を実施しました。

 その結果、作成企業は5%程度で環境省の調査と大きな差があることがわかりました。しかし取り組みへの意欲では36%が作成意欲を見せており、その支援を学生ができないか、検討を始めました。

学生が中小企業に出向き環境報告書作成の実習も

 岩手大学では昨年ISO14001を取得。学生委員会が学内監査実務を行っています。また昨年からは環境マネジメント学として26講座の授業を開講、専門性と実務学習を重ねてきました。そして今年からいよいよ地元中小企業へ出向いての環境報告書作成実習が始まります。

 昨年、試験的に行った学生の企業訪問では、企業側が大歓迎。社長の経営理念の説明と社内見学で1日費やしてしまうこともありました。「何か協力できればと思ってきたが、社長の話に心揺さぶられ、自分の将来を考えた」(学生)、「学生の一生懸命さに感心した」(企業)など、大きな刺激になりました。

 「環境」を架け橋に、地元中小企業と学生を結ぶ岩手の取り組みは、地域再生へ向けての大きな期待が込められています。

CO2を61トン削減~桜の植樹へ DoYuEco【大阪】

 大阪同友会環境経営分科会は、このほど「2009年度DoYuEco」の結果を公表しました。これは、現在全国展開している「同友エコ」のモデルとなったもので、環境経営とCO2削減に取り組んだ成果を報告し、優れた企業を表彰することを通して、環境経営に取り組む中小企業を広げていこうというものです。

 今回は20社が参加し、全体でのCO2削減量は6万1041キログラムでした。削減したCO2(1キログラム、2円と換算)にあたる金額分が植樹にあてられ、今回は淀川沿いに桜を植樹することになりました。「エコ大賞」は、4月の大阪同友会総会で発表・表彰されます。

県「エコ事業所」で3社が優秀事業所に~社員の家族もまきこんで 「同友エコ」推進に拍車【福岡】

同友エコ福岡

 福岡同友会では1996年に地球環境問題委員会が創設されてから、今年で15年目になります。当時、地球環境問題は企業の社会的責任としての認識がまだまだ薄いものでしたが、環境保全を考えながら、より地球に優しい製品開発や事業経営を考えていくことを目的に、全国に先駆けて、いち早く創設されました。

 これまで委員会では、環境に関する勉強会をはじめゴミゼロエミッション、ペーパーリサイクル回収事業、環境報告書作成勉強会、エコアクション21 取得セミナーなど、さまざまな活動を行ってきました。その中で、2008年には「同友エコ」の取り組みに先駆け、福岡県が推進する「エコ事業所宣言」への参加に取り組みました。

 「エコ事業所宣言」は、省エネルギー、省資源活動に率先して取り組む「エコ事業所」として宣言するもので、現在、県下で約1400社の事業所が参加しており、福岡同友会では317社(2009年3月現在)が参加しています。

 このほど、福岡県が「平成20年度エコ事業所取り組み結果」を発表しましたが、受賞した優秀事業所9社のうち、3社が会員企業でした。

 「自動車燃料使用量の削減に向けた取組部門」で最優秀事業所を受賞した(株)十八防災システムでは、エコドライブ実施のためのチェックシート記入に社員全員で取り組み、前年比 27・3 %という大きな削減を達成したことが高く評価されました。

 同部門で優秀賞事業所に選ばれたエヌビーエス(株)本社では、電気バイクや自転車の活用、公共交通機関の利用促進、「その他の地球にやさしい部門」で優秀賞を受賞した(株)福商運輸では、従業員におけるエコファミリーなどに取り組んできました。

 いずれも、環境経営に向けた会員の地道な取り組みが評価されたものです。

「中小企業家しんぶん」 2010年 4月 15日号より