【中同協拡大経営労働委員会問題提起】「労使見解」の精神を経営指針成文化にどう生かすか

企業変革支援プログラムの関連も踏まえて

中同協経営労働委員長 大野 栄一氏(愛媛同友会代表理事)

 9月28日、中同協拡大経営労働委員会が東京で開かれました(10月15日号既報)。今回の委員会は、企業変革支援プログラムの全国集計で「経営指針書は成文化したけれども実践が不十分」との分析結果が示されていることを踏まえ、経営指針の実践を促すための各同友会の組織的取り組みについて交流し、指針成文化運動の一層の発展を図ることをめざして、事例報告および問題提起、グループ討論が行われました。当日行われた大野・中同協経営労働委員長の問題提起の概要を紹介します。

拡大経営労働委員会

 私は、中同協が発行している『同友会がよくわかる』『人を生かす経営(「中小企業における労使関係の見解」―略称「労使見解」を所収)』『経営指針成文化の手引き』『企業変革支援プログラム・ステップ1』の4冊、そして『中小企業憲章』は、同友会会員にとって、特に各同友会経営労働委員長にとって必読の5点セットだと思います。

 なぜ、「労使見解」の精神を経営指針成文化に活かさなければならないのかを明らかにするために、「労使見解」と経営指針成文化運動の歴史を改めて振り返ってみたいと思います。

 『同友会がよくわかる』によると、同友会の前身といわれる「全中協」(全日本中小工業協議会、のちに全日本中小企業協議会と改称)は1947年に結成されますが、その目的には「従業員の人格の尊重、労使が協力して生産の推進と生活の向上をめざす」ことが提起されていました。当時としては先進的といえる内容です。これが1975年に発表された「労使見解」へと発展していったのです。1977年には「経営指針の成文化」が提起されます。

 『経営指針成文化の手引き』の「発刊にあたって」では、「労使見解」に触れながら、「企業経営の要諦は労使の信頼関係」にあることを指摘。さらに「労使見解」のまえがきでは、労使関係の創造的発展こそ企業成長の原動力であり、そのためには経営者の経営姿勢を正すことが必要であること、経営指針の成文化とその全社的実践が重要であることなどを述べています。労使の信頼関係の確立こそ経営の基本であり、「『労使見解』は経営指針成文化のよりどころ」と言えます。

 そしてこの「労使見解」の示す企業像が、1993年、中同協第25回定時総会での「21世紀型中小企業づくり」(全社一丸経営)と、「企業変革支援プログラム」につながっていきます。『企業変革支援プログラム・ステップ1』は、経営指針成文化への入り口であり、アウトプットは現在検討中の『ステップ2』です。

 各同友会では、経営指針成文化運動の現状について、改めて次のような視点から確認していただければと思います。

 (ア)各同友会で経営指針成文化運動が重要な位置づけとしておかれているか、(イ)「労使見解」の精神をよく理解し、経営指針の成文化に活かしているか、(ウ)成文化運動をする中で、実践、継続する企業が年々増えているか、(エ)実践、継続をする企業は、21世紀型中小企業に向かっているか。

 本日は、労使の信頼関係に基づく全社一丸経営のための経営指針とするために、成文化セミナー(創(つく)る会)やアフターフォロー(作成後の実践と継続への支援)のあり方を論議していただければと思います。

 中同協経営労働委員会としては、(1)経営指針成文化運動の全ての同友会への展開、(2)経営指針成文化運動推進者の育成などを今後の課題として、取り組んでいきたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2010年 11月 5日号より