チャレンジと改善で効果を生んだ「企業変革支援プログラム」(上)

【変革への第1歩~活用しよう企業変革支援プログラム】11

岩崎専務

(株)岩崎 専務取締役 古口淳士氏(北海道)

 企業変革支援プログラム・ステップ1の活用事例を紹介する本シリーズ。今回は、北海道同友会の「第28回全道経営者“共育”研究集会」第1分科会の報告(『北海道同友』第59号所収)から、古口淳士・(株)岩崎専務取締役(北海道同友会会員)の取り組みを2回に分けて紹介します。

 わが社の経営指針の取り組みは、事業承継を抜きには語れません。

 1999年、新社屋の落成式の3日前に父親である先代の社長が亡くなりました。私が入社して10年経った頃でした。先代の社長は、儲けは少なくともたくさん売ろうという、いわゆる薄利多売の経営を基本としていました。新たに社長となった兄は、単なるモノ売りから脱却し、付加価値の高い経営に転換したいと悩んでいました。私も同じ思いでした。

 そんな折、社長が体調を崩し検査入院します。社長業を代行することになった私は、社長と十分すりあわせができていない状態にもかかわらず、当社はモノ売りではない、付加価値の高い経営をしていくんだと社員に宣言しました。

 「どこかで聞いてきたことを鵜呑みにして喋(しゃべ)っている」と、たちまち社員の反発を買いました。当時の私は経営理念について何も理解していなかったのです。

同友会での学び

 このことがきっかけで2005年に経営指針の勉強をしようと、同友会札幌支部の第2期経営指針研究会に入れていただきました。翌年にはなんとか経営理念を完成させます。

 せっかくつくった経営理念だからと、東地区会で発表しました。ところが、参加者から「あなたの経営理念は何を言いたいのか分からない」とバッサリ言われました。確かに、テキストから「経営理念作成のためのシート1~6」をそのまま繋げただけで、何のまとまりもないものだったのです。

 その後、社長が復帰した際に、新社長のビジョンを社員にきちんと示すため、12月12日の創業祭で「創業者の理念を引き継ぐとは何か」を話してほしいとリクエストしました。社長からは顧客満足とソリューション(問題解決)ビジネス、ソリューション提案を進めていくことが新たな経営戦略として提唱されました。

 早速、その実現に向けて、役員やマネージャーの研修に取り組みました。役員が1枚岩となるために当社の各拠点で戦略を練ったり、マネージャーに対してはコーチングの技術を使った勉強などを行いました。

 2007年、再度地区会で経営指針の報告をする機会を頂きました。ところが地区会の皆さんは、まだそんなものかという反応でした。要は、社員研修などの取り組みはしていても、社員に理念は浸透してないということを見事に指摘されたのです。

個人からチームへ

 2007年に私は専務に就任し、本当の意味での社長との二人三脚の経営が始まりました。

 社長と私が目指すものは、モノ売りから脱却し、お客様に当社を活用していただき、満足(付加価値)を提供することです。分からないことをお客様と一緒に見つけることが、お客様はもちろん、社員の喜びになると考えました。

 その実現にはチームワークが不可欠です。しかし、個人の売り上げの積み上げが会社全体の売り上げになるという先代社長の考えが染み付いており、最初は幹部を中心に反発がありました。それでも、社長と私の考えを理解してもらうため、教育に着手しました。チームワークは一朝一夕に確立されるものではなく、社内でギクシャクしたときもあります。私は社長の補佐役として、社長の考えを伝える伝道者になりきり、社長と社員の橋渡しに努めました。取り組みが少しずつ成果として表れてきたとき、「お客様が満足して慕ってくれるから頑張れます」と社員から言われ、大変うれしかったものです。

(つづく)

会社概要

設立 1947年
資本金 9999万円
社員数 125名
事業内容 測量機器・事務機器・気象・地震等計測機器、3次元計測に関する設計施工管理システムの販売

「中小企業家しんぶん」 2011年 2月 15日号より